解説:文葉

アポテオーズ(仏/apothéose)

クラシックバレエの全幕ものをご覧になるとき、このフレーズを目にされる方も多いのではないでしょうか。
「アポテオーズ付」。

突如現れた耳慣れない言葉。私が初めて遭遇したのは『眠れる森の美女』のときで、プログラムのアポテオーズのシーン説明では大団円と訳されていたと思います。ファンファーレとともに始まる荘厳なフィナーレのおまけ。華やかなコーダでの出演者の総踊りがあったあと、幕切れに「アポテオーズ」が付いているのです。

このアポテオーズ、フランス語で「最高の賞賛」と訳されます。théoは「神の」という意味。皇帝などへの礼讃、崇拝、神格化という意味もあるんですね。出演者への賞賛。先程の『眠り』なら、妖精たちへの賞賛とお姫様と王子の結婚のお祝い。『くるみ』ならクララがお菓子の国の住人から賞賛される。『白鳥の湖』なら、オディールとジークフリートは船に乗って航行…。ロマンティック・バレエにはありませんが、プティパの作ったバレエにはアポテオーズが台本に用意されます。なぜアポテオーズが作られたのか、きちんと探ってみたいですね。ちなみに『眠り』のアポテオーズは、「アンリ4世賛歌」というフランスの曲が使われていて、眠りから覚めて100年経ったことを意味しているとか。アンリ4世の時代から100年後のルイ14世の御代に変わったことを意味しています。

三大バレエがアポテオーズ付で上演されるか、いろんなヴァージョンがあるので、先程述べたものは必ずではありませんが、音楽はきちんとアポテオーズとして用意されています。バランシン振付、ストラヴィンスキー作曲の『ミューズを率いるアポロ』にもアポテオーズがつくんです。プティパを意識していたバランシンだからこその構成か。太陽神そして、音楽の神のアポロンを祝福して終わるのは、バランシンの、音楽を崇め、ストーリーではなく音楽を目にみえるように振付をする彼のポリシーの表れなのだろうな。