【第30回】ビューティフルアラベスク

この連載も30回を迎えました!皆様のバレエライフに少しでもHappinessをプラスできればと願っております。

さて今回は、バレエのポーズといえば「アラベスク」。キレイなラインと、脚を上げる際の股関節まわりについてお話しましょう。

「アラベスク」

「脚は持ち上げる?」

アラベスクで注意されることと言えば「もっと脚を上げて!」とか「膝を伸ばして!」とか。脚一本の重さをグイッと90度まで持ち上げるって、なかなか大変なことです。頑張っていれば、いつか脚が軽くなる日がくるのでしょうか?まずは「脚を頑張って持ち上げる」という概念から離れてみましょう。

アラベスクの脚を後方で持ち上げる時の、筋肉の働きを見てみますとお尻、腰、太ももが非常に忙しい所。上げ脚一本をグイと「引っ張り上げる」と前述の筋肉が全て、腰に向けて引き付けられる締まり方をします(写真A)。
それぞれの筋肉の強烈な締まりに耐えられるコントロールがあるのならば、それもありかもしれませんが、起こりうる悪循環の可能性として、背中が腰部に引っ張られる=上体が反り返る。軸足の股関節は強いお尻の締まりによって抜ける=軸足が落ちる。大腿筋の強い締まりは脚の縮み=膝が曲がる
いずれにせよ、何だか苦しそうで「優雅な伸びのあるアラベスク」にはならないような気がします。

「脚は持ち上げる?」

「アラベスク」

「脚は開くもの」

太い枝を突然持ち上げると、幹が折れてしまう。ただアラベスク脚を持ち上げると、軸が崩れてしまうということですから、先に軸足の方から考えてみましょう。
軸足の股関節がしっかりしている状態と、そうでない状態を比較するにあたり、内もも「内転筋の働き」に焦点を当ててみましょう。
内ももに力を入れるとなると、誰もが「両の脚を揃える、締める=内転」を考えます。確かに内ももはグッと絞まる感じ。しかしこの力をよく考察すると、股関節へ向かって、お尻より後方へ向かって「太ももを引く」という現象となります。前ももと膝はガッチリ固まるのですが、股関節はへこんだ空き缶のように、張れない、支えのない状態に陥ります。イラストで確認してみましょう。
そもそも「脚を開いていくアラベスク」なのに、両脚を閉じる力を入れるというのは不思議な気がします。

「脚は開くもの」

「脚は開くもの」

「内ももはパーで張り出す」

それでは内ももを引かずに、「押し出して」みましょう。細かく説明するより感じてもらった方が分かりやすいので、写真を見ながら「引く、押す」の違いを試してみてください。ポイントは方向性。「股間から膝へ向かう力」を入れます。注意点は「骨盤の在り方」。内ももをただ前に突き出すと骨盤が後ろに締まる、または下がると、腹筋が落ちて股関節はまたまた詰まってしまいます。骨盤も前面でベルトを合わせるように、内ももと共に前に起こしてあげて下さい。

「内ももはパーで張り出す」

「それではアラベスク」

最後に、この「内もも起こし法」を適応して、アラベスクをしてみます。5番ルルヴェからと、ピケアラベスクの二通りやってみます。かの有名なジョージ=バランシンが多くの写真で見せている「手つき」を真似して添えてみました。僕は彼から直接ご指導を受けた訳ではありませんが、あの手つきはバランシン作品のための「アンデオールでの内ももの在り方」を示唆したものだと、僕は信じています。

「アラベスク」

「アラベスク」

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バレエ・ピラティスによるカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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