藤野 暢央 Text by Nobuo Fujino

【第17回】ポワントでも趾を伸ばす~ルルヴェ~

ポワントの先で立ち上がると、どうしても膝が曲がってしまう。ということは「足首から爪先までの使い方が、膝に入る力に影響を与えている」ということになりますね。
今回は「ポワント、ドゥミポワントでのルルヴェやピケ」での趾(あしゆび)の使い方に、脚全体の繋がりを考えながらアプローチします。

「脛(すね)から伸びるくじ引きの糸」

足の甲を見ると、足首からそれぞれの趾へと伸びる筋(すじ)が確認できます。これらは筋収縮の少ない白い筋、くじ引きのヒモのようなもので、そのヒモを引っ張って操っているのは、脛の筋肉となります。単純にイメージするとイラストのように、脛の筋肉を引っ張り上げると足の甲、趾は「引ける。曲がる」。逆に脛の筋肉を伸ばし出すと足の甲は、爪先へ向けて「出る。伸びる」という力を得ます。

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趾を動かす筋たちはとても精密に出来ていて、その気になれば絶妙にバラバラに動かすことは可能ですが、今回は母趾(おやゆび)「足代表選手」。それ以外の4本「サポート選手」とします。5本の趾を伸ばす為の長母趾伸筋、長趾伸筋があり、母趾を引っ張る前脛骨筋が、それらに覆い被さるように、膝下外部に付いています。
脛の前側にギュッと締まる感覚はこの前脛骨筋が「引っ張る力」によるものであり、その強さの裏で他の伸筋たちは完全に敗北してしまいます。従ってこの前脛骨筋を膝下から足首へ向けて「何とか絞り出そうとする」必要があります。

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「アンデオール時の脛の回転方向に気を付ける」


前脛骨筋の向きからして、脛をななめ上に、外巻きに引くと母趾を引っ張り上げる力が生じます。故にアンデオール時に脛を無理やり外巻きにすればするほど、母趾先から足の甲はどんどん短く引けてきます。
「アンデオールのススメ(リンク先)」では「脛膝から回す」と説明しましたが、それは「膝の向き」を整えるためのもの。膝が外向きの限界に達した以上に、まだ脛を捻り出そうとする力を加えると、この引く力が強くなります。

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ピケやルルヴェで立ち上がる際は、この前脛骨筋の頂点、起点部分を意識して、プレパレーションの段階で「下に向かわせる用意」をして、足の甲を通じて母趾の爪先へ。なだらかな斜めカーブを「少しインサイドへ」伸ばし出します。足代表の母趾がしっかり出た後、残りのサポート趾たちを母趾同様に、足首から爪先へと伸ばして下さい。

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アンデオールのような、体各部に起こす「捻り」に関して、ネジとボルトで解り易いイメージがあります。

ネジが回転させようとする骨の感覚
ボルトが締まる関節

抽象的な表現ですが、体中どこの関節でも「ネジを外巻きにするとボルトに締まる=固める」「内巻きがボルトから伸び出る=動く」という作用があります。
アンデオールは、何でもかんでも外巻きに!だけでなく、なだらかに内巻きにする流れを加えて、はじめて最大の長さと強さを発揮するものと思って下さい。

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>>> エクササイズ[ 17 ]「アンデダン強化&Standing Dart(アームスの調整)」

(イラスト:あゆお / 写真:藤野暢央)

藤野 暢央(ふじの のぶお)

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12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。