藤野 暢央 Text by Nobuo Fujino

【第10回】伸びやかな踊りはプリエから

バーレッスンでも最初に登場する「プリエ」。脚の筋肉を上手に使って屈伸することで、次の動きへと繋ぐ「接続詞」となり、またはジャンプやルルヴェからの着地を滑らかにする「句読点」となります。やはり踊りを「流暢に語る」には質の良いプリエが必要不可欠。柔らかくそして強いプリエを手に入れて、誰もがうっとりできる踊りをお披露目してください。

「脚のバネを知る」


バネ(スプリング)といっても、引っ張るものと、押し返すものの2種類があります。得手不得手はあるものの、全身の筋肉は全て、この伸びると縮むの両方の能力を兼ね備えています。
筋肉の働きを簡単に説明すると、重力に逆らって持ち上げようとすると短く縮み(引く力)、重力に向かって押そうとすると長く伸びようとする(押す力)2つの性質があります。脚の前面につく前ももと脛(すね)の筋肉は引っ張る力(ブレーキ筋)を得意とし、裏面の裏ももとふくらはぎは、押し伸ばす力(抗重力筋)を本質として持っていることを知っておきましょう。
 

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「やはりアルデンテお尻」

バレエでは「もっと引き上げて!」というのが定番のようですが、何をどう引き上げるのかを注意しなければなりません。お尻や脚の付け根(股関節)をグイと持ち上げる力を優先すると、先ほど説明したように、脚全体にバネを強く引く力が入り、関節にはブレーキが掛かり、脚は短く、硬くなろうとします。お尻自体も強く締まり、動かしたいはずの股関節や腰骨の邪魔をしてしまう力となります。
横ポケットに位置する大転子。この骨をどうするかで前もも、脛のバネは変化を起こします。

 大転子を締める、上げる→引く力、縮まる力
広げる、下げる→押す力、伸びる力

 

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続いて坐骨ですが、坐骨には裏ももや大内転筋といった、地面を押す「抗重力筋」が繋がり、扱い方が非常に重要になります。
2つの坐骨を寄せよう、上げようとすると、やはり裏ももからアキレス腱まで引き縮まる力が入るため、関節にロックが掛かり「座るべき椅子に座らない」ような働きをしてしまいます。
坐骨も大転子と同じく「広げよう、下げよう」とする事で、脚全体は裏側で「伸びよう、長くなろう」とする効果を得ます。
 

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「良質なプリエ」

従って、良質なプリエとは大転子と坐骨を広げて、膝裏や足首に向かって「下げながら」屈んでいき、戻るときはそれらの部位を先に持ち上げず、地面に残してくるように膝を伸ばしていく。もちろん、呼吸が筋肉を「動かす」ので、プリエのタイミングで深い一呼吸を繋いでみましょう。
腰を据えて、地面の下まで脚を押し込むような、奥深いプリエ。坐骨や大転子を開く、張るといった感覚は、脚を高く上げるお話でも重要になりますので、覚えておきましょう。

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>>> エクササイズ[ 10 ] 「Squat & Calf Raise (スクワット&カーフライズ)」

(イラスト:あゆお / 写真:藤野暢央)

藤野 暢央(ふじの のぶお)

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12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。