【ユーリ!!! on ICE × Chacott】 衣裳デザインの裏側 <第6回>
2016/11/22掲載
いよいよ、本格男子フィギュアスケートアニメ「ユーリ!!! on ICE」が始まりました。
最初にチャコットに衣裳デザイン原案のオファーがあったのは、今年の1月。今回、このアニメのために久保ミツロウさんが描き下ろした作品ということで、私たちも全部のストーリーはまだ知りません。この先どうなっていくのか楽しみです♪
そして、ストーリー以外にもうひとつ。選手が試合で着用する衣裳にも注目してください!
今回、特別企画として衣裳の原案をデザインした佐桐のインタビューを紹介していきます。元のデザインがどのようにつくられ、それがどのようにアニメ化されたのか、ぜひチェックしてくださいね!
― 第6回 ―
7話 グランプリシリーズに入りストーリーも盛り上ってまいりました!
前回に続き、中国大会のフリープログラムの衣裳について聞きました。
●まずは開催国、中国の選手ジ・グァンホンから。胸元が大きく開いたジャケットスタイルですが、これはどのようにデザインしたのですか?
━監督から伺ったフリープログラムのテーマが「絆とバイオレンス」ということで、マフィアっぽいデザインにしました。彼は17歳で若いのですが、自分を大人として見て欲しいと思っているのではないかと思い、あえて若い彼が挑戦するカラーとしてブラウンを選びました。
かたちもショールカラーのジャケットにして、胸元を大きく開けました。裾にも変化をつけています。
上半身の半分にシルバーのモチーフとブラウン、ブラック系のストーンで光る飾りを付けました。
●続いてピチット・チュラノンの衣裳ですが、フリーもショートと同じく「王様とスケーター」がテーマですが、がらっと色のイメージが変わりましたね。
━はい、同じテーマなのですが、未来(現代)にタイムスリップしてきたという設定でした。 なので衣裳というよりは普段着のような感じを出すため、また、褐色の肌を引き立てるようボディを白にしました。
ショートは重厚感を出しましたが、フリーは軽くさわやかに仕上げました。
●ショートプログラムでは、キャラクターの魅力が存分に出ていたギオルギー・ポポーヴィッチですが、フリーの衣裳はいかがでしょうか?
━実は監督から"通称ブラヒモと呼ばれる繊細な肩ひもつきの衣裳が彼のトレードマーク"と聞いていたのですが、ショートの衣裳では、「カラボス」というモデルになるイメージがあったので封印していました。フリーではしっかりこの肩ストラップ(ヒモ)をデザインに入れました。本人はデコルテに自信があるのではないかと思います。
ほかにも半分が女性、半分が男性という設定をいただき、王子と姫、両方の要素を入れました。
●具体的にはどのあたりですか?
━前身頃のデコルテにつけたドレープを寄せた布や、腰のベルト、ブーツが王子(騎士)。ベルトに付けたスカート風のフリルが姫の要素です。
●ブル-を選んだ理由は?
━ 姫らしいといえばピンクですが、あまりにも女性らしいので、寒色系のブルーを選びました。アニメーションでは少しくすんだカラーになっていましたね。
●背中の羽も印象的ですね。
━こちらも監督からリクエストがありました。
オーガンジーやチュールを羽根のような形にカッティングした布を付け、クリスタルやブルーのストーンを貼っています。
オーガンジーは光沢と張りがある素材で、羽根の立体感を出したかったので使用しました。
フリル部分はジョーゼットにしています。ジョーゼットの方が細い糸を使っていて、マットでしなやかな素材です。
胸には鳩をモチーフにし、アクセントを付けています。白い鳩は「幸福」「愛」の象徴といわれており、まさに彼の追い求めるテーマですね。ポポーヴィッチという名前から「鳩」というニックネームもつけられているようです(笑)。
●ブーツはどんな素材でできているのですか?
━合皮です。ニット素材の上にレザーのようにみえる素材を貼りつけてあります。
本物の革よりも色がきれいで、汚れも付きにくく軽いので、使いやすい素材です。ポリウレタンも入っているのでストレッチも効いています。
フィギュアスケートではあまり使われていないかもしれませんが、舞台衣裳などではよく使われていますね。
●最後にクリストフ・ジャコメッティの衣裳はいかがですか?
━フリーの曲は『ボレロ』のイメージということだったので、スペインを意識して赤と黒にしました。ショートと同じく、身体のラインを活かせるオールタイツにしました。
●そういえば肩の部分が闘牛士のようですね!
━はい。骨格もしっかりとしているので、闘牛士っぽく肩を強調しました。
●アニメーションでも脇が肌色に透けていましたが・・・
━はい。肌を見せるなら彼かなと思い、脇から腰にかけて大胆に開けたデザインにしました。クロスした布の下にはベージュの布地が貼ってあるので、素肌ではないです(笑)。
●デザイン画では、上半身はネット状になっているんですね。
━筋肉の動きを強調させるよう、シースルー素材です。アニメーションよりも肌が透ける感じです。その上に付けたモチーフは、レースとスパンコールを組み合わせたものになっています。パンツの脇に付けたのはスパンコールモチーフだけだったのですが、アニメーションでは房状の布になっていましたね。
今回はここまでです。
次回、ロシア大会ではまた新しい衣裳が登場します!
お楽しみに!
- 第1回:ヴィクトルのフリープログラム用衣裳のデザイン
- 第2回:男性用衣裳の特徴
- 第3回:勇利 VS ユーリ
- 第4回:勇利に憧れる南健次郎のフリーと、勇利のフリーの衣裳について
- 第5回:グランプリシリーズ中国大会のショートプログラムの衣裳について
- 第6回:グランプリシリーズ中国大会のフリープログラムの衣裳について
- 第7回:ロシア大会ショートプログラムの衣裳について
- 第8回:ロシア大会フリースケーティングの衣裳について
- 第9回:グランプリファイナル ショートプログラム
- 第10回(最終回):グランプリファイナル フリースケーティングの衣裳について
- 番外編:チャコットが制作した「勇利のフリースケーティング衣裳」ができ上がるまで
- 番外編2:ユーリ・プリセツキーのエキシビジョンの衣裳について