「パリ・オペラ座バレエのイタリア人たち」公演で来日する元エトワール、レティシア・プジョルがアデュー公演と島崎徹の新作について語った

ワールドレポート/東京

インタビュー構成・関口紘一

レティシア・プジョル Laetitia Pujol

トゥールーズ出身。2002年『ドン・キホーテ』を踊ってエトワールに任命され、ヌレエフ作品など多くを踊った。マチュー・ガニオとパートナーを組むことが多かったが、2017年9月のアデュー公演でもガニオと「エメラルド」を踊った。またマニュエル・ルグリなども登場して、大いに湧いた。その後もガラ公演などで踊り、優美な舞台姿を見せている。「パリ・オペラ座バレエのイタリア人たち」公演では、島崎徹振付の『さくら』をアレッシオ・カルボーネ と踊る。

----2017年のパリ・オペラ座バレエのアデュー公演はいかがでしたか。『ジュエルズ』『シルヴィア』「デフィレ」などが踊られて、特別ゲストも登場して華やかで盛大な舞台だったとお聞きしました。

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レティシア はい、とても感動的な瞬間でした。実は、最初はアデュー公演はやりたくなかったのです。引退するという日が怖かったからです。でもブリジット・ルフェーヴル(当時の芸術監督)が、「アデュー公演をやることは、あなたのためにも、一般のお客さんのためにも大切です。あなたができることをやればいいのだから、怖がらないで」と言ってくれました。そしてマチュー・ガニオ、マニュエル・ルグリとも一緒に踊ることができてとても嬉しかったです。
マチューは私のロミオです。特別な存在なのです。マニュエルは、私のダンスのお父さんみたいな存在です。
まず『ジュエルズ』を踊りました。私の2回の妊娠中に、2回ともマチューと『ジュエルズ』を踊ったので、マチューは、私と子供を一緒にリフトしてくれていたのです。だから、これは特別な作品で、アデュー公演では踊りたかったのです。また、ノイマイヤー作品も踊りたかったです。なぜなら、ジョン・ノイマイヤーがローザンヌ国際バレエコンクールで、私に賞を授与してくれたから、パリ・オペラ座バレエに入団できました。また、ノイマイヤーの『シルヴィア』は、マニュエルとモニク・ルディエールのために振付けられた作品です。この2人は私のダンスの両親みたいなものでしたから、『シルヴィア』は私にとって大変意味のある作品だったのです。
それからもちろん、「デフィレ」はとても大切で、25年間ずっと一緒にがんばってきたカンパニーのみんなが、私のキャリアの一番最後に、みんなが同じ衣裳で、みんなで同じ舞台にのっている、ということが、私にとってとても大きな意味を持ちました・・・(思い出して感極まり、思わず落涙・・・)
本当に大きな大きな感激でした・・・。
「デフィレ」を一番最後に踊り、アデュー公演が終わった後、カンパニーにさよならを言うのはとても悲しかったのです。みんなが一緒に同じ舞台にいたことは、私にとって本当に特別なことだったのです。

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島崎徹振付『さくら』リハーサルより 撮影協力:神戸女学院大学(以下、すべて)

----アデュー公演の後、ダンサーとしての心境は変わりましたか。

レティシア YesとNoです。私自身は変わっていませんけれども、今は楽しみのために踊ります。また、新しいチャレンジができることがうれしいです。今回のように、島崎さんの作品を踊るような新しいチャレンジがあることはとても嬉しいです。
そして、家族と過ごす時間が増えたことは大きな喜びです。ですから悲しくありません、とてもハッピーです。プレッシャーもないし、ほっとしています。
パリ・オペラ座バレエにいたときは、エトワールになるためとか大きなプレッシャーがあり、いろいろと大変でしたけれど、今は楽しむために踊ることができます。

----「パリ・オペラ座バレエのイタリア人たち」公演で初めて踊られる島崎徹振付の『さくら』について、どのように思われますか。

レティシア 感情に満ちた振付です。美的なセンスに満ちています。ただ振付が並んでいるだけではなく、ストーリーはないのですけれども、向かっていく明快な方向性があります。

----振付の動き自体に特徴的なことは感じられますか。

レティシア 最初は、島崎さんのスタイルを習得するのが大変でした。しかし、3日目4日目のリハーサルからは、とても速く進みました。
島崎さんのダンサーのように動けるように、と努めました。振付の言語やバックグラウンドの違いがありますが、日本スタイル、フランススタイル、イタリアスタイル、そして、パリ・オペラ座流、島崎流、といった違いがミックスされていました。島崎さんの振付はとても音楽的です。音楽があると、振りがとても簡単になるのです。なぜならば、どのステップも、音楽と一緒だと意味を成すからです。
ステップ自体には、これが特別難しい、ということはなかったのですが、全体的に、島崎さんのスタイルという異なったスタイルに溶け込むのがちょっと大変でした。4日間リハーサルをしてきて、とても良くなってきていると思っています。

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----日本人の振付家と仕事するのは、今回が初めてですか。

レティシア 初めてです。私はパリ・オペラ座バレエに在籍した時には、勅使川原三郎の作品も踊っていません。島崎さんの作品を踊ることができてとてもうれしいです。振付家と仕事をすることは、いつもとても楽しいです。

----パリ・オペラ座バレエ時代に、アレッシオと組んで踊られたことはありますか。

レティシア バランシンの『コンチェルト・バロッコ』『真夏の夜の夢』、その他にもガラコンサートなどでは、一緒に踊ったことがありますが、全幕作品では一緒に組んだことはありません。
また、2人のためにつくられたデュエット作品は、数か月前に、イタリア人のシモーネ・バラストロが作りましたから、この『さくら』が2作目となります。

----一緒に踊られていかがですか。

(すかさず、アレッシオが)とても軽い!(笑)そして、もっとがんばれ!というふうに後押ししてくれるパートナーです。

レティシア お互いに良い感じ方で一緒に踊れるし、身長的にも体型的にも、とても良いバランスで合っていると思います。

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---- "Les Italiens de l'Opera de Paris" (パリ・オペラ座バレエのイタリア人たち)の活動について、どう思いますか。

レティシア とても良いことだと思います。パリ・オペラ座バレエにこれだけ優れたイタリア人ダンサーがいるということを世界に示すべきです。

アレッシオ
 彼女はこのグループにも関わってくれています。観ているだけではありません。若手の指導にもあたってくれているし、いろいろとオペラ座の伝統を伝えてくれています。スタジオでたくさん一緒にリハーサルをして、次の世代に多くのことを伝えていくことが、このプロジェクトの面白いことろです。

レティシア
 それがとても大切だと思います。これは、マニュエルやモニクが私たちにしてくれたことです。私が知っていること、経験で学んだことを私だけに留めるのではなく、新しい世代へ、私が25年間学んだり習得したりしてきたことを伝えることが、今の私にとって大切なことだと思っています。

----レティシアさんはヌレエフ作品を多く踊られてきたと思いますが、彼の踊りにはどんな特徴がありますか。

レティシア ヌレエフの振付を踊るのはとてもとても大変です。でも、同時に、とても素晴らしいことです。私は『ロミオとジュリエット』が特に素晴らしいと思います。
難しいところは、ステップですね。とても難易度が高く、一見、自然な流れではないのです。しかし実際には自然な動きにできているのですが、たくさん練習しないと自然に踊れないのです。たくさんの練習が必要です。ヌレエフは、<特別な宇宙>を持っているのです。
ヌレエフ版『シンデレラ』では、(アレッシオが、私のプロデューサー役でした)姉たちの役もたくさん踊りましたから、むしろシンデレラ役よりも好きでした。ご存知のように、ヌレエフ版『シンデレラ』は、別のコンテクストに設定されています。
ヌレエフの振付で私の一番のお気に入りは『ロミオとジュリエット』です。本当にたくさんのドラマがあるからです。私にとって大切な作品です。ジュリエット役をマチューと一緒にパトリシア・ルアンヌ(英国ロイヤル・バレエで踊り、近年はマクミラン作品を新国立劇場バレエにコーチしている)に習うことができてラッキーでした。彼女はヌレエフと一緒に、この作品を作りましたから。
ヌレエフの『ロミオとジュリエット』は、全幕を踊り切るのが本当に大変な作品です。リハーサルの時などは、3つのパ・ド・ドゥを踊り、カンパニーとスタジオでリハーサルをしてから、バルコニーのリハーサルをして、もう夕方になってしまって、マチューの顔が真っ白になっているのを気にしながら応援したりします。(笑) その時はマチューはロミオが初役でしたが、とても素晴らしい舞台でした。
ヌレエフの『眠れる森の美女』は、ジョゼ・マルティネスや ニコラ・ル・リッシュと踊りました。
私がまだプルミエだった時にジョゼと踊ることができたことは、とても大きなギフトでした。
『ドン・キホーテ』は、とてもとてもとてもとても大変な作品ですが、私はこの作品を踊ってエトワールに任命されました。そして多くのパートナーと、何度も踊りました。ルグリ、ル・リッシュ、バンジャマン・ペッシュ、ロベルト・ボッレ、ジェレミー・ベランガールのエトワールプロモーションなどでも踊り、いろいろな思い出があります。ただ、とても長くて、3幕分のエネルギーを保つのが大変な舞台なのです。
『ラ・バヤデール』は、私はガムザッティ役しか踊っていませんが、私は好きです。ザハロワとこの役を踊ったときは、本当に怖かったですね。

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----レティシアさんは『天井桟敷の人々』では、ギャランス役もナタリー役も踊られていますが、この2つの役を踊り分けることは大変ではありませんでしたか。

レティシア ナタリー役を踊るのはそれほど大変ではありません。ギャランス役は、私は映像をみて3日間で振りを覚えました。リュドミラ(パリエロ)が怪我をしたため代役でした。でもその時はマチューがパートナーだったので、とても踊りやすかったですね。
ナタリーはシンプルです。私はイザベル・シアラヴォラとマチューと一緒に踊りました。私(ナタリー)がとてもお腹がすいていて、後ろにマチューがいて、手を伸ばすシーンがあるのですが、これがおかしいのです。この笑いをこらえるのが辛かった(笑)ことを覚えています。

アレッシオ 僕もイザベルと踊って、とっても笑いました。彼女は面白いんです。

----2人のお子さんがいてダンサー生活を続けていくことは大変ではないですか。

レティシア 出産から舞台に復帰するのは、とても大変でした。公演やリハーサルで疲れて家に帰れば大騒ぎだし(笑)。でも、子供たちはエネルギーをもたらしてくれるし、インセンティヴを与えてくれるので、大変疲れますけれど私は大丈夫です。

----本日はリハーサルでお疲れのところを楽しいお話をお聞かせいただきまして、ほんとうにありがとうございました。あなたとアレッシオのために振付けられた『さくら』を見せていただくことを、とても楽しみにしております。

▼「パリ・オペラ座バレエのイタリア人たち」公演の詳細は
https://www.chacott-jp.com/news/shoplesson/others/detail012613.html

▼レティシア・プジョル2012年のインタビュー記事
https://www.chacott-jp.com/news/worldreport/paris/detail004571.html

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