コンプレックスを魅力に変えて...
-ダンサー中村祥子さん監修レオタード-
Directed by SHOKO NAKAMURAは、コンプレックスを魅力に変えるためのヒントが詰まったバレエ・ウェアシリーズです。体型や踊りの癖にともなうダンサーの悩みに、カッティングや高品質な素材で応えつつ、意識すべきポイント=“意識のスイッチ”をそのままデザインに活かし、個性的でエレガントなスタイルに仕上げています。
「肩が上がってみえる」
「胸元が気になる」
「腰やおしりの位置が気になる」。
今回の新作は、ダンサーによくある悩みに目を向けて、
よりよいスタイルの維持のために
考えられたレッスンウェアです。
2021年12月、都内某所で試作品のフィッティングと企画会議が行われました。「コンプレックスとどう向き合い、美しさにつなげていくか?」というテーマで、ウェアの企画がブラッシュアップされていきました。
中村祥子さんのアイデアやこだわりが形になっていく様子をレポートします。
試作品のモデルは、同じ悩みをもつチャコットのスタッフがつとめました。
まずは「肩が上がってみえる」という方におすすめのレオタードから。
モデルさんがポール・ド・ブラをすると、祥子さんがフィット感やラインを入念にチェック。「袖は肩がやさしいラインにみえるフレンチスリーブで、繊細な印象になるよう、肩に透け感のあるストレッチチュールを使っています」とデザイナーが説明を加えます。
「私もこの袖丈は好きです。でも、シンプルなデザインは生徒っぽく見えてしまいがちなので、少しおしゃれ感をプラスしたいですね。背中はV 字よりなだらかなラインにして、チュールがしゅっと細くなる感じに切り替えたらきれいに見えるのでは」と祥子さんが提案します。切り替えのラインに沿って、試作品に印がつけられていきました。
祥子さんのアイデアを加えた完成形がこちら。袖から背中につながるチュールの切り替えが優美なデザインです。首から背中まで、肩のラインを意識しやすいつくりとなりました。
- 衿ぐり、アンダーバスト切替の曲線的なラインとコンパクトなキャップスリーブ。
- いかり肩や肩に力が入ってしまいがちな方でも肩のラインをきれいに見せます。
二つ目の試作品は「レッスン中、胸の揺れが気になってしまう」という方におすすめのレオタード。
胸まわりにぐるりとサポート力のある裏地を入れ、胸の揺れを気にせず踊れる仕様です。
「窮屈じゃないのに安心感があります。背中を押してもらっている感じでジャンプも楽にできそう」とモデルさん。
祥子さんが注目したのは、丸くくり抜かれていた首の後ろの開きでした。「これだと開きが中途半端で、背中が窮屈で使いづらそうに見えます……」。「胸のホールド感を保持するため、背中を覆うハイネック型にはこだわりたいです」とデザイナー。では、開きをなくしてファスナーをつける? しかし、それだと生地がボコボコしてしまう可能性が……。
議論の中で祥子さんが出したアイデアが、背中に猫の目のような縦長の窓を開けることでした。「背中に『目』をつけるつもりで、後ろ姿を意識できそう」と祥子さん。なるほど、ぐっとシャープな雰囲気になりそう、とスタッフ一同もうなずきます。
カッティング調整の結果、完成形は下のような仕上がりに。「ラグランスリーブから背中へとつながるラインが、身体をきれいに見せてくれますね」と、祥子さんも太鼓判を押すデザインとなりました。
- バストのホールド感を高めた仕様。
- 衿と背中の開きが小さく、包み込むようなデザイン。
- よりすっきりと見えるよう、透け感のバランスとカッティングにこだわりました。
三つ目の試作品は「反り腰になりやすい」方におすすめのレオタード。
脇のラインを鏡でチェックしやすいよう、前後で異なる生地を使用。腰がコンパクトに見えるよう、ハイレグ気味のカットになっています。
「反り腰の人は、下腹の筋肉を使えていないと思います。だからといって、お腹全体に力を入れて固めてしまってはだめ。恥骨の少し上と肩胛骨の下に、意識のポイントがあります」と祥子さん。
「着圧の強い素材で押さえたりするより、そのポイントを意識させるデザインが良さそうですね」とデザイナーも共感。
しかし、下腹のポイントはスカートやパンツを履けば隠れてしまう微妙な位置です。自分にしか見えないマークを置くか?試作品に細かなラインが入れられていきます。見えてきたのは、切り替えでそのポイントを指し示すようなデザインでした。「矢印みたい。下腹に意識を集中する感じが、すごくいいと思う」(祥子さん)。細かな切り替えを入れると、強度も問題になります。カッティングをどうするか、裏地をどこまでつけるか……商品化に向けた具体的な調整が続きました。
- 丹田に向かって集中するデザインラインは引き上げたい部分を意識させるスイッチをイメージ。
- バックスタイルの切替もウエスト周りをすっきりと見せます。
最後の試作品は、初めてのパ・ド・ドゥ・レッスンにおすすめのウェアです。
パ・ド・ドゥは、慣れないうちは戸惑いや緊張がつきものです。「だからこそ、相手への配慮や思いやりが必要ですね」と祥子さんは語ります。
レオタードは、背中や脇など男性がサポートで触れる部分は布で覆っているため、肌の露出は少な目ですが、背中やデコルテが美しく見えるカッティング。さらに、男性の手が滑ったりひっかかったりしにくい素材で、縫い目の位置も工夫されています。「パ・ド・ドゥではポール・ド・ブラを正しい位置で保つことが特に大切!」という祥子さんのアイデアで、袖の下に腕のかたちを意識しやすいラインを追加。スカートはショートスパッツ付き。ショートスパッツはより脚が長く見えるカッティングに修正されました。
なお、前回の打ち合わせでは「脚口を意識させないレオタードを」という祥子さんからの宿題がありました。「レオタードとタイツの段差を可能な限りなくせば、ヒップラインから足先までがひとつにつながり、脚がより長く美しく見えると思います」。この宿題に応え、今回のシリーズはすべて、脚口にゴムを使用せず、生地の伸びで吸いつくようにフィットするつくり。食い込みやあたりは最小限に抑え、ストレスフリーの着心地を実現しているのも注目のポイントです。
- パートナーの手が引っかかりにくいよう、小さめの背中の開き。
- 肌の露出を控えつつバレリーナらしい洗練されたカッティングに見えるようデザインされています。
「レッスンに“全集中”できる良いシリーズになったと思います」と祥子さんは語ります。「レッスンでは人に見せる意識も大切だけれど、自分の意識を高めることも大事です。先生に注意されたことを身体の感覚としてとらえ、自分で意識できるようになること。“意識のスイッチ”を自分で繰り返し入れ直すことで、コンプレックスを美しさに変えることができる」。このシリーズは、その“意識のスイッチ”をデザインとして取り入れています。
「スイッチのデザインには私の“イチ押し”も込めています(笑)。見た目にも個性的に仕上がっていますから、ぜひこのウェアで気持ちを上げて、自分を表現してほしい」。
着る人の「ベスト」を引き出すために、祥子さんからのヒントが詰まったDirected by SHOKO NAKAMURA、シリーズの今後の展開にもご期待ください!