現代を映した新作を一挙4作品初演し、カンパニーの実力を示したK-BALLET COMPANY「NEW PIECES」

K-BALLET COMPANY「NEW PIECES」

"Piano Concert Edvard" 宮尾俊太郎:振付、"Thaïs Méditation" 山本康介:振付、"FLOW ROUTE"
渡辺レイ:振付、『死霊の恋〜La Morte Amoureuse』 熊川哲也:振付

宮尾俊太郎の振付による"Piano Concert Edvard"、山本康介介が振付けた"Thaïs Méditation"、渡辺レイ振付の"FLOW ROUTE"、熊川哲也の振付による『死霊の恋〜La Morte Amoureuse』という4つの新作が、K バレエ カンパニーにより一挙に上演された。新作を同時に4作上演できるということは、カンパニーの実力を証明していると思われる。

"Piano Concert Edvard" 撮影:言美歩

まず、宮尾俊太郎振付の"Piano Concert Edvard" はE.グリークのピアノ協奏曲イ短調 作品16により、小林美奈と山本雅也を中心に5組のペアが踊った。ノルウェーのショパンとも呼ばれグリークのピアノ・コンチェルトは、氷河やオーロラなど北欧の大自然を楽想に感じさせる。水色の衣装のダンサーたちがうまく音楽の流れに沿った踊りをみせた。1楽章では4組のペアが大きな瀧を想わせるような動き、2楽章では小林美奈と山本雅也のペアの静かなパ・ド・ドゥ、3楽章では全員が力強く踊った。構成のコントラストはクッキリと現れていたが、ボキャブラリー豊かな動きがほぼ同じ基調で構成された小品だった。5組のペアの動きの流れが、自然の雄大さを描いていた。
続いて踊られた山本康介振付 "Thaïs Méditation" は、荒井祐子と宮尾俊太郎のパ・ド・ドゥで、音楽はJ.マスネの「タイスの瞑想曲」。音楽に合わせゆったりとしたパ・ド・ドゥが一面の星空のもとで踊られた。ラストでは美しい薄衣が天から舞い降りて幕を下ろした。個々の愛が宇宙的な世界と融合していく美しさを荘厳に表していると感じさせられた。
渡辺レイ振付の"FLOW ROUTE"(流れるもの)は、ベートーヴェンのコリオラン序曲 作品62、弦楽四重奏曲第14番より第1楽章、交響曲第7番より第4楽章により、3つのパートを黒い衣装の男性たちとベージュの衣装の女性ダンサーたちが踊った。ベートーヴェンの音楽に照応した力強いコンテンポラリー・ダンスの動きで造型された明快な表現だった。メインを踊った矢内千夏と遅沢佑介と16名のアンサンブルが闊達な舞台を見せた。

"Thaïs Méditation" 撮影・瀬戸秀美

"FLOW ROUT" 撮影/瀬戸秀美

休憩ののち上演された最後の演目『死霊の恋〜La Morte Amoureuse』は、ショパンのピアノ協奏曲第1番ホ短調作品11より第1楽章に熊川哲也が振付けたもの。テオフィル・ゴーティエの同名小説に基づき、物語をバレエ向けにアダプテーションしている。
許されざる恋に陥っていた聖職者ロミュオー(堀内將平)が、想いを寄せていた高級娼婦クラリモンド(浅川紫織)の霊に一心に祈りを捧げている。そこへ彼に惹かれている上司のセラピオン(石橋奨也)が現れ、ロミュオーへの想いを伝えよとするパ・ド・ドゥとなる。しかし、ロミュオーの心は揺るがない。すると恋の苦しみに囚われた死霊クラリモンドが舞台奥から姿を表し、部屋の空気は一変。ロミュオーとクラリモンドの凄絶なパ・ド・ドゥ。ついにその血を吸い死の国で切ない恋を全うしようとクラリモンドは、愛する人ロミュオーの喉に喰らい付く。ロミュオーはなすがまま、聖職者でありながら死霊に自らの血を与えて、クラリモンドを救おうというのだ。瀕死のロミュオーを見つけたセラピオンは、異状を感じて十字架を掲げる。道ならぬ恋に苦しみ抜いたクラリモンドは昇天し、銀色の光となった・・・。
「善人なおもて往生をとぐいわんや悪人おや」この歎異抄の言葉が身に染み入るような、恋の情念が凝縮されたドラマのエンディングであった。
(2018年2月27日 Bunkamura オーチャードホール)

「死霊の恋〜La Morte Amoureuse」撮影:瀬戸秀美

「死霊の恋〜La Morte Amoureuse」撮影:瀬戸秀美

ワールドレポート/東京

[ライター]
関口 紘一

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