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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2018.02.13]

若手ダンサーたちへの期待を込めた『白鳥の湖』新春公演、谷桃子バレエ団

谷桃子バレエ団
『白鳥の湖』マリウス・プティパ:原振付

谷桃子は、1948年、かつての東京バレエ団第四回公演『白鳥の湖』全幕でオデット/オディールを踊っている。その後、1949年に谷桃子バレエ団を設立し、翌50年には『白鳥の湖』第2幕を上演し、その後も度々再演している。そして1955年10月には関西で、11月には東京で『白鳥の湖』全幕を初演した・・・。『白鳥の湖』の日本上演というと、戦後すぐの東京バレエ団による全幕初演に話題が集まりがちだが、谷桃子バレエ団が『白鳥の湖』全幕をどのように捉え、どのように取り組んでいったか、ということをたどることは、その受容を明らかにするためには欠かすことはできない。

tokyo1802d-4213.jpg 谷桃子バレエ団『白鳥の湖』檜山和久
(C)STAFF TES(すべて)

谷桃子バレエ団の2018年新春公演で上演された『白鳥の湖』は、原振付はマリウス・プティパであり、谷桃子とカンパニーが積み重ねてきたヴァージョンである。そしてそれは、ロシアのというか旧ソ連の演出を受容し、継承していると思われる。ラストは悲劇で終り、比較的道化の踊りが多い。第3幕の花嫁候補は四人だった。王子は湖畔の森で出会ったオデットを愛しているので、その候補たちの中から花嫁は選ばず、花束を道化に手渡してしまう。この演出も久しぶりに見た気がする。
第4幕はなかなか迫力があった。ロットバルトのたくらみによって、オディールに愛を誓ってしまったジークフリート王子は急ぎ湖畔に戻り、懸命に許しを乞う。しかし、時既に遅く、オデットは絶望して湖に身を投げる。愛に殉じたジークフリートも続いて身を投げる。完璧な愛の力の前に、さしものロットバルトも魔力を失い息絶える。やはり、美しい悲劇だった。
オデット、オディールを踊ったのは馳麻弥(はせ まや)、ジークフリートは檜山和久だった。(13日昼は竹内菜那子、三木雄馬。14日はオデットを植田綾乃、オディールを山口緋奈子、王子を今井智也というキャストだった)

馳は2015年入団で、昨年ウラジオストックのマリインスキー劇場プリモルスキー分館で『眠れる森の美女』のリラの精を踊っているほか、地方巡回公演でダイジェスト版『白鳥の湖』の主役を踊っている。落ち着いた踊りで柔らかい表現を見せ、共演ダンサーたちとも上手く調和を保っていたと思う。オデットもオディールも全体に無理のない動きで過不足なく表現できていた。檜山も多くの白鳥たちの中でしっかりと男性的なラインを描き良かった。他に道化に扮した牧村直紀が軸の安定した素速いピルエットをみせ、舞台をよく盛り上げていた。デヴェルテスマンでは、ルースカヤが雰囲気が感じられ、楽しく観ることができた。しかし、既に多くのカンパニーで踊られてきた演出の部分も見受けられた。偉大な創設者の演出・振付であるから、大切にしていかなければならないのは当然であるが、多くのオペラハウスで『白鳥の湖』は、新しいヴァージョンにリニューアルされている。(今回は衣装デザインをヴァスチラス・オークネフが担当した)必ずしも新しい演出だから良い、ということではないが、ある程度、踊り込まれた演出は、振付を尊重しつつ、時代に応じるという意味からも改定を施す必要もあるかもしれない、そうも感じられた。
(2018年1月13日夜 東京文化会館)

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tokyo1802d-3371.jpg 馳麻弥、檜山和久 tokyo1802d-4100.jpg 馳麻弥、檜山和久
tokyo1802d-0992.jpg 谷桃子バレエ団『白鳥の湖』竹内菜那子、三木雄馬(他日公演)
(C)STAFF TES(すべて)