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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2017.12.11]

創作バレエを中心に若手ダンサーを多く起用して「躍動」したバレエコンサート、牧阿佐美バレヱ団

牧阿佐美バレヱ団「躍動」
『ヴァリアシオン・プール・カトル』三谷恭三:振付、『飛鳥 ASUKA』より「竜剣の舞」牧阿佐美:振付、『パリの炎』よりグラン・パ・ド・ドゥ ワシリー・ワイノーネン:振付、『動物の謝肉祭』より「白鳥」三谷恭三:振付、『ロメオとジュリエット』よりバルコニー・シーンのパ・ド・ドゥ 三谷恭三:振付、『時の彼方に ア ビアント』より「白い部屋」ドミニク・ウォルシュ:振付、『コンスタンチア』ウイリアム・ダラー:振付

読売新聞社の主催による牧阿佐美バレヱ団特別公演「躍動」を観た。会場の読売ホールのキャパシティは501席。装置も背景もない素の舞台空間で7演目が踊られた。オーケストラ・ボックスもないから客席が舞台間近で、大ホールで踊ることに慣れたダンサーにはプレッシャーがかかる、と言う。
全7演目中3演目が創作バレエで、『ロミオとジュリエット』バルコニー・シーンと『動物の謝肉祭』より「白鳥」も芸術監督の三谷恭三の振付だった。創作バレエは日本のカンパニーでもしばしば創られているが、主に経済的理由からなかなかレパートリーとして踊り継ぎ、次の創作に発展させていくことが難しい。そうした中で、創作作品とカンパニー独自の振付を中心に据え、チャイコフスキーもプティパの振付けもない、というバレエコンサートが開催できるということは、このカンパニーの大きな強みであろう。いわゆるガラ公演の人気演目は、『ロミオとジュリエット』以外では、『パリの炎』と『白鳥』だったが、サン・サーンスの曲は、チェロをダンサーの清瀧千晴が弾く、と言う思いがけない趣向があった。牧阿佐美は終演後の公開インタビューで、「私は最初は親(橘秋子)に反抗して、音楽を習っていた」と語っていたが、これはそうした想いを少し反映した試みなのかもしれない。なるほど、アレキサンドラ・ダニロワに薫陶を受けた牧阿佐美らしい、ネオクラシックに指針をとった素敵なプログラム構成である。

tokyo1712d_01.jpg 「ヴァリアシオン・プール・カトル」田村幸弘
撮影/讃井泰雄(すべて)ゲネ・プロを撮影

さて、幕開きは三谷恭三振付の『ヴァリアシオン・プール・カトル』。映画音楽のシェイクスピア3部作などを作曲した20世紀イギリスの作曲家、ウィリアム・ウォルトンの「ファサード組曲」に振付けられたバレエで、男性ダンサー四人が踊った。衣装はお揃いで、帽子、トップ、ベルト、パンツ、シューズはすべて黒。そして両手に白い手袋をはめてアクセントをつけていた。
まず、四人一緒に踊り、一人ずつヴァリアシオンを踊り、四人がアップテンポで様々な組み合わせを組んで踊って終わると言うシンプルな舞踊構成。なかなか軽快でユーモラスな動きを採り入れながら、キレ良くスタッカートに踊った。男性ダンサーの美しさを、肉体を強調することなくさりげなく際立たせた。動きの流れも良かった。ただ、音楽との関係があるしオープニングの曲でもあるから、なんともいえないが、観客としては短く感じられて、もっと踊りが見たいというやや物足りない感じも少し残った。
続いて10月28日に富山市のオーバード・ホールで全幕再演したばかりの『飛鳥 ASUKA』第1幕から「竜剣の踊り」。香土の宮の宵宮祭りで、竜神に使えることを誓う踊りである。今年3月に『三銃士』のコンスタンスを踊った若い太田朱音が剣を持って、古代の雰囲気を漂わせて踊った。
『パリの炎』よりグラン・パ・ド・ドゥは、米澤真弓と濱田雄冴が踊った。米澤はスタイルがいい。さらりと踊ったが、濱田とのコンビネーションも良く、全体にまとまりのある踊りだった。
そのカーテンコールの拍手も終わらないうちに、清瀧千晴が下手から登場してそのまま、椅子に座ってチェロを抱えた。そして弓のさばきも軽やかに、カミーユ・サン=サーンス作曲の『動物の謝肉祭』より「白鳥」のメロディを奏ではじめ、三宅里奈が踊った。三宅は今年10月の『眠れる森の美女』公演でリラの精を踊った。胸には赤い大きなブローチを付けて、銃に撃たれ死に瀕した白鳥の命の最後を踊った。

tokyo1712d_02.jpg 「動物の謝肉祭より 白鳥」清瀧千晴、三宅里奈 撮影/讃井泰雄

『ロミオとジュリエット』よりバルコニー・シーンは、阿部裕恵と先ほどチェロを弾き終えたばかりの清瀧千晴。阿部は今年6月の『ドン・キホーテ』で主役デビューを果たし、バジル役の清瀧千晴と踊った。愛らしく清新なジュリエットだった。安定感のある清瀧千晴とは、良いパートナーシップを築いていけそうだ。

tokyo1712d_03.jpg 「時の彼方に アビアント」
青山季可、ラグワスレン・オトゴンニャム

休憩の後は『時の彼方に ア ビアント』第2幕3場「白い部屋」。ドミニク・ウォルシュ振付、三枝成彰音楽である。プリマの青山季可とラグワスレン・オトゴンニャムが踊った。残された妻が死別した夫に空想のなかで出会うシーンである。青山が落ち着いた表現を見せ、しっとりとした雰囲気のあるパ・ド・ドゥだった。
『コンスタンチア』は、フレデリック・ショパンの『ピアノ協奏曲2番へ短調』にウィリアム・ダラーが振付けた作品。ダラーは1907年生まれでアメリカ出身のダンサー、振付家。フォーキンやバランシンの教えを受けた。ダンサーとしてはABTの創成期に活躍した。『コンスタンチア』は、ショパンの叶わなかったソプラノ歌手への恋を描いたもの。コンスタンチアを織山万梨子、ショパンを菊地研、ジョルジュ・サンドを日高有梨、ソリストを茂田絵美子、中川郁、三宅里奈、高橋万由梨が踊った。恋愛模様を描いたバレエらしくダンサーたちが登場すると、舞台は華やぎ魅力が溢れてくる。さらに織山と日高が競い合うように熱を込めて踊り、盛り上がった。菊地研も初挑戦の役だか、ややおさえ目の良い存在感を見せた。
(2017年11月3日 よみうり大手町ホール)

tokyo1712d_04.jpg 「コンスタンチア」日髙有梨(ジョルジュ・サンド)撮影/讃井泰雄