ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2017.10.10]

ひばりの歌が作った情感豊かな音楽を見事にダンスで表した、楽しさが心に沁み入った舞台

NBAバレエ
『THE RIVER』アルヴィン・エイリー:振付、『HIBARI』リン・テイラー・コーベット:振付

2015年6月に初演されたNBAバレエの『HIBARI 』が、美空ひばりの生誕80年を迎えて再演された。私は初演の舞台を見逃していたが、評判が良かったので楽しみだった。だが、その一方で少し不安でもあった。ブロードウェイ・ミュージカル『スウィング!』やABTに振付けた『ガチョーク賛歌』などでその実力は知っていたが、アメリカ人のリン・テイラー・コーベットが本当に美空ひばりの歌をバレエとして見せることができるのだろうか・・・と。しかし、それは杞憂だった。

tokyo1710c_0071.jpg 「HIBARI」峰岸 千晶・三船 元維
撮影/吉川幸次郎(すべて)

『HIBARI 』は美空ひばりの代表的な歌の音楽を巧く汲み取って振付けていて、大いに楽しめた。全体を「光〜デビュー」「愛〜スターへの道」「哀〜波乱の人生」「幸〜トリビュート」という4部に構成している。
それぞれの歌ごとに、動きにバラエティーがあり、リン・テイラー・コーベットのダンスを造型する実力が感じられた。とりわけ「お祭りマンボ」が楽しかったが、「リンゴ追分」「哀愁波止場」、そして3組のペアにコーベットらしい大きなリフトを多用した振りが際立った「哀愁出船」、赤いベルベットの布と黒い衣装を巧みに組み合わせて、いくつものファッションを作り、実に多彩な表現を見せた「ある女の詩」。一転して全身黒い衣装に黒い布を使った、女性と男性二人のパ・ド・トロワによる「悲しい酒」。演歌と言われるひばりの歌を支えている情感豊かな音楽に着目して、活逹なダンスに変換してみせた力量は大したものだと思う。ミユージカルの振付・演出では、衣装や小道具、背景などに多くを語らせるのだと思われるが、そうした工夫する力がこうしたバレエの中に自在に生かされている、とも思われた。
また、私たちの愛唱歌だった美空ひばりの歌にも、アメリカのポピュラーソングが大きな影響をあたえていたのだということを改めて感じさせられた。そして様々な歌に挑戦し、見事に歌いこなして、次々とヒットさせた美空ひばりの才能の大きさにも改めて感心させられた。
ナビゲーターはミュージカル・スターの綿引さやかが務めた。ちょっとナレーションが多すぎたような気もしたが、同時代を生きていない観客の方が多数なのかもしれない、ということへの配慮だろう。

tokyo1710c_0086.jpg 「HIBARI」 tokyo1710c_0097.jpg 関口 祐美
tokyo1710c_0142.jpg 浅井 杏里・土田 明日香・米津 萌・武藤 桜子 tokyo1710c_0174.jpg 大森 康正・高橋 真之
tokyo1710c_0182.jpg 竹内 碧 tokyo1710c_0200.jpg 大森 康正・菊地 結子・綿引さやか

アルヴィン・エイリー が1970年にABTに振付けた『THE RIVER』が同時に上演された。音楽はジャズの巨匠、デューク・エリントン。
まず、群舞で流れていく全体の動きを作って、川が体験する様々な出来事や川の情景を描いていく、という構成。「Spring(泉)」のソロで始まり、「Meander(蛇行)」パ・ド・トロワ、「Giggling Rapids(早瀬)」デュエット、「Lake」デュエット「Falls(滝)」パ・ド・カトル、「Vortex(渦)」のソロというふうに展開が続いていく。
初めは抒情的なメロディーだったが、次第にパーカッションがリズムを刻み本格的ジャズの雰囲気がたかまって、心が熱くなった。ジャズとバレエが、ジャズダンスとはまた異なった形で融合して、アメリカ文化の一つの流れが感じられた舞台だった。
(2017年9月2日夜 東京芸術劇場プレイハウス)

tokyo1710c_R0019.jpg 「THE RIVER」 tokyo1710c_R0104.jpg 大島 淑江・安西 健塁
tokyo1710c_R0136.jpg 「THE RIVER」大島 淑江・安西 健塁
撮影/吉川幸次郎(すべて)