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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2017.07.10]

阿部裕恵がキトリ役で全幕主役デビューし、清瀧千晴がバジルを踊った『ドン・キホーテ』

牧阿佐美バレヱ団
『ドン・キホーテ』アザーリ・M・プリセツキー、ワレンティーナ・サーヴィナ:演出・振付(プティパ、ゴールスキー版に基づく)

牧阿佐美バレヱ団の『ドン・キホーテ』は、プリセツキーとサーヴィナの演出振付によるヴァージョン。プリセツキーは周知のように、20世紀を代表する舞姫、マイヤ・プリセツカヤの弟。キューバ国立バレエで踊り振付も手がけるようになった。モーリス・ベジャールの20世紀バレエ団などでも活動してきた。演出・振付はオーソドックスなもので、手際よく物語をまとめている。

キャストは初日が青山季可と菊地研で、二日目に阿部裕恵がキトリ役で全幕デビューを果たした。阿部は仙台出身で2016年に新国立劇場バレエ研修所を卒業し、牧阿佐美バレヱ団に入団した。元々、橘バレエ学校、AMスチューデンツで学んでいた。
阿部キトリは、初役とは思えない安定感のある舞台姿で安心して観ていられた。ゆったりとしたなかなか良いラインを描くダンサーである。ただ、感情表現には少しだけ物足り無さを感じた。もう少しだけ、表情に変化をつけ身体の動きの中に喜びや様々な感情を表してもらいたい。『ドン・キホーテ』という演目は、やはり、キトリの笑顔が楽しさの中心である。阿部は新国立劇場のバレエ研修所出身ということで、スタイルも良く舞台映えもするのだから、魅力的なスマイルのほうもぜひお願いしたい。
バジルを踊った清瀧千晴も余裕のあるダンスで観客を楽しませた。踊りも役柄の理解も表現も安定していたが、少し落ち着きすぎているかもしれないとも思った。この演目では、もっと弾けるというか、やんちゃというか、馬鹿馬鹿しいくらいのユーモアが現れたほうがさらに楽しいと思う。お二方ともお行儀が良く好感度は高いが、スペインの太陽と情熱の国の若者の恋らしいエネルギーが溢れる感じがほしい。
街の踊り子とキトリの友だちを踊った中川郁、日高友梨、キューピッドの米澤真弓などソリストたちもしっかりと踊っていて、やはり、タレントの豊富なカンパニーだなと感じた。この特徴を活かした演目の上演を望みたい。
(2017年6月11日 文京シビックホール)

tokyo1707e_01.jpg 阿部裕恵 撮影/山廣康夫 tokyo1707e_02.jpg 清瀧千晴 撮影/山廣康夫
tokyo1707e_03.jpg 阿部裕恵、清瀧千晴 撮影/山廣康夫