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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2017.06.12]

妖精世界の平和が実現した楽しく魅力的な世界、NBAバレエ団『真夏の夜の夢』

NBAバレエ団
『真夏の夜の夢』クリストファー・ウィールドン:振付、『葉は色褪せて』アントニー・チューダー:振付
tokyo1706d_0005.jpg 「葉は色褪せて」撮影/吉川幸次郎

NBAバレエ団がアントニー・チューダーの晩年の秀作『葉は色褪せて』とクリスファー・ウィールドンがコロラド・バレエ団に振付けた『真夏の夜の夢』(原作はシェイクスピアの戯曲)を上演した。ウィールドンの『真夏の夜の夢』は、なかなかおもしろかった。この作品は原作をバレエ化するために一部カットして作られる場合が多い。アシュトンの『ザ・ドリーム』は町人たちの芝居騒ぎをカットしてるし、バランシン版もすべてではないが、同様にカットしている。確か、モンテカルロ・バレエ団のジャン=クリフト・マイヨー版が少しデフォルメしているが、妖精、アテネの人々、職人たちをそれぞれ描いていたと記憶する。
ウィールドン版もまた、森の妖精の世界とアテネの人たち、職人たちをバランス良く描いている。原作の物語世界のバランスをできるだけ失うことのないように作られていたると思われる。
ハーミア(岡田亜弓)とライサンダー(米倉佑飛)、ヘレナ(竹内碧)とデミトリウス(三船元維)の恋のこんがらがりを中心にした人間界と、オベロン(宮内浩之)、パック(高橋真之)、ティターニア(峰岸千晶)の魔法を使う妖精界がほとんど同等の印象で描かれているし、職人たちもシェイクスピアの奇天烈でコミカルな台詞を、動きによってヴィジュアルに表そうと試みている。
ウィールドンは、やはり、変幻する妖精の世界を描くのが上手い。男の妖精と女の妖精もメインは三人ずつとしてここでもバランスを整え、オベロンとティターニアの対立を浮き上がらせている。オベロンがパックの悪戯を戒め、ティターニアをロバ男の呪縛から解放して、改めて愛をわかち合うことを喜ぶパ・ド・ドゥが良かったが、これも単に夫婦の和解だけではなく、背景に二つの世界が平和を取り戻した、という喜びがあるから爽やかで印象深く感じられるのだろう。
ハーミア組とヘレナ組もスピード感を失わずに、混み入った表現をよく踊っていた。また、オベロンとパックの関係も上手く表され踊られていた。バレエを十分に楽しむことができた舞台だった。
(2017年5月20日昼 新国立劇場 中劇場)

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「真夏の夜の夢」撮影/吉川幸次郎