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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2017.04.10]

バレエとバリ舞踊が融合して新しい楽しい世界に遊ぶことができた、東京シティ・バレエ団『ドリーム』

東京シティ・バレエ団「バレエとバリ舞踊の饗宴〜バリ版:真夏の夜の夢〜」
『ドリーム(バリ版:真夏の夜の夢)』中島伸欣:台本・演出・振付、石井清子:振付

東京シティ・バレエ団は、異なったジャンルとバレエのコラボレーション企画をしばしば行っているが、今回はバリ舞踊とバレエという組み合わせだった。沖縄県那覇市のパレット市民劇場との提携事業である。

tokyo1704g_05.jpg 「ドリーム」〜バリ版:真夏の夜の夢〜
森絵里/吉留諒 撮影:鹿摩隆司

第1部はバリ舞踊(「クビヤール・トロンポン」「チョドン」「オレッグ・タムリリンガン」)と『白鳥の湖』第2幕だった。
第2部は『ドリーム(バリ版:真夏の夜の夢)』。これは、バリ舞踊とバレエの共演によるシェイクスピア原作の『真夏の夜の夢』の舞台。タイトルも「ドリーム」となっていっていたが、アシュトン版の『ザ・ドリーム』と同様に、町人たちの芝居作りの部分をカットしている。音楽構成および作曲、ガムラン演奏ユニットを主宰する櫻田素子が担当している。
オベロン、ティターニア、パック、インドの少年など妖精のパートをガムランの音楽とバリ舞踊で表し、ハーミア、ヘレナ、ディミトリウス、ライサンダーなどの人間のパートをバレエダンサーとオーケストラが受け持った。その他のノマド・フェアリーや妖精のソリスト、コール・ド、動物たちはバレエダンサーが扮していた。

tokyo1704g_04.jpg 「ドリーム」〜バリ版:真夏の夜の夢〜
撮影:鹿摩隆司
tokyo1704g_06.jpg アナッ・アグン・グデ・ラーマ・プトラ/イ・クトゥット・スアンダ 撮影:鹿摩隆司

オベロンの魔法の惚れ薬によってティターニアがロバ男に惚れてしまうシーンは、ボトムは登場しないので、オベロンに因果を含められたパックが妖怪のようなバリの仮面を被って務めた。ティターニアはオベロンから愛しいインドの少年を守り、安らかに寝んでいたが、インドの少年はオベロンに密かに奪われ、目覚めると目の前にバリの妖怪のお面を被った「可愛い」パックがいて一目惚れ! してしまう。ここはシェイクスピアの物語から離れたオリジナルだったが、また、一興があった。そしてここでは例外的にオーケストラのメロディが流れて二人は愛の床へと淑やかに収まった。このシーンの踊りは、さながら「お神楽」を観ているようだった。まさに「アジアは一つ」である。
しかし、もちろん、オベロンは怒る。「惚れられろ、とは言ったが、一緒に床へ入ろ、とは言ってないぞ‼ このお調子者め」とパックをさんざん嬲る。
そして、こんがらがっていたハーミア、ヘレナ、ライサンダー、デミトリウスたちの赤い糸もなんとかほどけて、オベロンとティターニアそしてインドの少年たちが収まるところに収まって大団円を迎える。エンディングは、結婚式のシーンがなかったものの、メンデルスゾーンのあの曲か流れてめでたしめでたし。

tokyo1704g_07.jpg ニ・ニョマン・チプタ・ウィリアワティ/ニ・マデ・チャンティカ・オクタヴィア・アンダニ 撮影:鹿摩隆司 tokyo1704g_08.jpg 「ドリーム」〜バリ版:真夏の夜の夢〜 撮影:鹿摩隆司

シェイクスピアの作る妙薬は、『ロミオとジュリエット』のように絶望にうちひしがれる悲劇も、心の底から笑って解放をもたらす喜劇も自在に作りだすことができる奇跡の薬である。
ガムランの音楽とバリ舞踊、バレエとオーケストラの音楽が代わる代わるシーンを作っても、全く違和感はなかったし、不思議な味わいの新たなエンターテインメントを楽しむことができた素晴らしい夕べだった。
(2017年3月12日 ティアラこうとう大ホール)

tokyo1704g_03.jpg 「白鳥の湖」より第2幕
中森理恵/黄凱 撮影:鹿摩隆司
tokyo1704g_09.jpg 「ドリーム」〜バリ版:真夏の夜の夢〜
坂本麻実/福田建太 撮影:鹿摩隆司
tokyo1704g_10.jpg 「ドリーム」〜バリ版:真夏の夜の夢〜 撮影:鹿摩隆司