新国立劇場バレエのダンサーたちが踊る様々なデュエットが楽しかった「ヴァレンタイン・バレエ」

新国立劇場バレエ団「ヴァレンタイン・バレエ」

『テーマとヴァリエーション』『タランテラ』ジョージ・バランシン:振付、『ソワレ・ド・バレエ』深川秀夫:振付、『トロイ・ゲーム』ロバート・ノース:振付 他

新国立劇場バレエ団がバランシンの『テーマとヴェリエーション』、クラシックのパ・ド・ドゥ集(『白鳥の湖』黒鳥、『ドン・キホーテ』『ソワレ・ド・バレエ』『タランテラ』)そして『トロイ・ゲーム』というプログラムを組み、「ヴァレンタイン・バレエ」として上演した。(2日間の上演で、17日は『ドン・キホーテ』、18日は『白鳥の湖』)

私は18日を観たが『テーマとヴァリエーション』のプリンシパルはダブルキャストで、小野絢子と奥村康祐(他日は米沢唯と福岡雄大)だった。 バランシンが1947年にチャイコフスキーの「交響組曲第3番」の最終楽章に振付けたバレエ。プティパを中心とするロシア・バレエへのオマージュであり、バランシン自身の華やかなクラシック・バレエの時代への深い郷愁が込められている。プリンシパルが基本的なクラシック・バレエのステップを示し、次々と変奏が踊られていく。そして12組のカップルの踊りにプリンシパルのカップルが加わって繰り広げられるシーンは圧巻。管楽器の高らかな響きとともに男性の群舞、女性の群舞が力強く踊られ、プリンシパルを称えて幕が下りる。息を呑むような豪華絢爛の終幕である。衣装は全体に淡い色調が使われ、動きそのものを格調高く表している。忘れがたい印象を与える素晴らしいバレエである。

「テーマとヴァリエーション」 小野絢子、奥村康祐 撮影/鹿摩隆司

「テーマとヴァリエーション」
小野絢子、奥村康祐 撮影/鹿摩隆司

「ソワレ・ド・バレエ」 池田理沙子、井澤駿 撮影/鹿摩隆司

「ソワレ・ド・バレエ」
池田理沙子、井澤駿 撮影/鹿摩隆司

『白鳥の湖』から黒鳥のパ・ド・ドゥは、木村優里と渡邊峻郁が踊った。木村の堂々とした力強い踊りは魅力的だ。ただ私はキトリの天にも届くような伸びやかな踊りが好きだった。
深川秀夫がアレクサンドル・グラズノフの「四季」に振付けた『ソワレ・ド・バレエ』は、池田理沙子と井澤駿が踊った。星空を背景にした雰囲気のあるバレエ。回転技を多く使った可愛らしい動きで構成されていた。
バランシンがゴットシャルク/ハーシー・ケイの音楽に振付けた『タランテラ』は、米沢唯と福田圭吾のペア。「Ballet for the Future 2016」で『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』を踊って喝采を浴びた米沢唯(パートナーは奥村康祐)に期待した。軽快な踊りだったが、もっと弾けるかな、とも思った。しかしもちろん、十分に楽しむことができた。

最後はロバート・ノースが振付た『トロイ・ゲーム』。ノースはアメリカ人だが、ロンドン・コンテンポラリー・ダンス・シアターやバレエ・ランベールなどでディレクターや振付家として活躍した。
『トロイ・ゲーム』は1974年に、ボブ・ダウンズ他の音楽を使って初演された。男性ダンサー8人によって踊られるジムナスティックな動きと、男性的なもののパロディを組み合わせたダンスである。「ヴァレンタイン・バレエ」というだけあって、新国立劇場バレエ団のダンサーたちのデュエットが印象に残る一夜だった。
(2017年2月18日 新国立劇場 オペラパレス)

「白鳥の湖」黒鳥のパ・ド・ドゥ 木村優里、渡邊峻郁 撮影/鹿摩隆司

「白鳥の湖」黒鳥のパ・ド・ドゥ
木村優里、渡邊峻郁 撮影/鹿摩隆司

「タランテラ」 米沢唯、福田圭吾 撮影/鹿摩隆司

「タランテラ」
米沢唯、福田圭吾 撮影/鹿摩隆司

「トロイ・ゲーム」 撮影/鹿摩隆司

「トロイ・ゲーム」 撮影/鹿摩隆司

ワールドレポート/東京

[ライター]
関口 紘一

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