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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2016.06.10]

活気に満ち、豊かな情感を感じさせたシンフォニック・バレエ、堀内充バレエコレクション2016

堀内充バレエコレクション2016
『ロマンシング・フィールド』『バレエの情景』『Rhapsody in Blue』『Les Chemins』『パリジェンヌのよろこび』堀内充:振付

堀内充Ballet Collection 2016が昨年に続いて開催された。4回目の今回は、堀内充振付の5作品が上演された。

tokyo1606c_7603.jpg 「ロマンシング・フィールド」撮影/木本忍

プログラムは『ロマンシング・フィールド』で幕を開けた。1996年、堀内充とフットライツダンサーズにより初演された作品で、アントニン・ドヴォルザークの音楽に振付けられている。
まずは5組のペアが舞台上に円形を作って始まった。そして「フィールド」「ウッドランド」「ムーン」「サンシャイン」という4つのシークェンスを、淡い水色の衣装を着けた10人のダンサーが入れ替わりつつ、爽やかなフォーメーションを展開する。ロマンティックな表情が舞台上に次々と表され、音楽の特徴的なメロディーと呼応した軽快なムーヴメントが広がる。明るく清新なのびのびとしたイメージのダンスだった。
続いて今回初演のイーゴリ・ストラヴィンスキーの曲を使った『バレエの情景』。この曲はフレデリック・アシュトンが振付けたことでも良く知られる。ストラヴィンスキーのいわゆる新古典主義時代にあたる1944年の作曲。ブロードウェイ・レヴューの中の1曲として作曲された。かつては充の父の堀内完も手掛けたという。
ポーズを取ったクラシック・チュチュの女性ダンサーに、フラッシュが次々と当られて始まった。総勢22人のダンサーが何度となく入れ替わり、様々なフォーメーションを踊ったが、舞台の中心には、いつもチュチュを着けたダンサーがいた。クラシックの動きを崩さず、速いテンポでフォーメーションの転換を繰り返して、印象の強い幻想的雰囲気を醸した。音楽の闊達な動きを上手くヴィジュアルに表現した、見事な振付の手腕である。音楽にも秘められていたバレエ・ブランへのオマージュが、時空を越えて甦ったかに感じられた舞台だった。
そしてジョージ・ガーシュインの『ラプソディ・イン・ブルー』は、あの有名なメロディーが流れて幕が開いた。黒いバレエレオタードを着けたコール・ド・バレエと真っ赤なバレエレオタードの女性プリンシパルが踊り、やがて男性のプリンシパルが登場した。ビルが林立する都会の夜景を背景に、ガーシュインならではの情感の豊かな愛の賛歌が踊られた。

tokyo1606c_7904.jpg 「バレエの情景」撮影/木本忍 tokyo1606c_7952.jpg 「ラプソディ・イン・ブルー」撮影/木本忍
tokyo1606c_8170.jpg 「Les chemins」 撮影/木本忍

そしてフランシス・プーランクの曲により、堀内充と行友裕子が踊った『Les Chemins』。堀内充のちょっとおどけたマイムで始まり、レディ行友へのコミカルなアプローチがおもしろい。レディとピエロ風の愛の情景が楽しいデュエットだった。ラストではレディを追って消えた堀内充が幕の間から顔を出し、Gaite Parisienne、と書いた看板を掲げる。その裏返すと Enjoy、と書いてあり、次の作品への「経路」を示して、『パリジェンヌのよろこび』は始まった。
これはもう、ジャック・オッフェンバックの軽快・軽妙、闊達な曲に乗って、深紅の衣装の踊り子が黒服の男性ダンサーたちとともにフレンチ・カンカンを踊りまくるダンス。レオニード・マシーンがバレエ・リュス・ド・モンテカルロに振付けたものが良く知られる。堀内充版では8つのシークェンスによるフレンチカンカンの舞台のシーンが繰り広げられ、ダンサーたちの楽屋から始まる洒落たシンフォニック・ダンスとして構成されていた。
公演直前に逝去された堀内完氏に捧げられたかのような、活気に満ち溢れながらも豊かな情感を感じさせた公演だった。
(2016年5月17日 めぐろパーシモン 大ホール)

tokyo1606c_8612.jpg 「パリジェンヌのよろこび」撮影/木本忍