ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2016.03.10]

洒落たバロック調のダンスが楽しめた、イリ・ブベニチェクの『ルール・ブルー』東京シティ・バレエ

東京シティ・バレエ団「ダブル・ビル」
『L'heure bleue(ルール・ブルー)』イリ・ブベニチェク:振付、
『ベートーヴェン 交響曲第7番』ウヴェ・ショルツ:振付

東京シテイバレエが都民芸術フェスティバルのためのダブルビル、イリ・ブベニチェク振付の『L'heure bleue(ルール・ブルー)』(日本初演)とウヴェ・ショルツ振付の『ベートーヴェン 交響曲第7番』を上演した。安達悦子が芸術監督に就任して以来、意欲的なプログラムが組まれている。

tokyo1603e_01.jpg 『L'heure bleue』撮影:鹿摩隆司(すべて)

まず、ブベニチェクの『L'heure bleue(ルール・ブルー)』から始まった。音楽はJ.S.バッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲」「6つのパルティータ」(第1, 2, 5番)「ヴァイオリン協奏曲第2番」「チェンバロ協奏曲第5番」からピックアップした曲、W.A.モーツァルトの「弦楽セレナーデ」、L.R.ボッケリーニの「弦楽5重奏曲」などが使われている。
設定は、スノッブの女性を二人の男性が取り合うもの、とパンフレットに書かれていたので、開幕冒頭、4人の男性ダンサーが登場したのには少し戸惑った。しかし、二人の人物とそのシャドーというか、元々、フレームをテーマとしているので、フレーム外の存在或いは、フレームにはとらえられない感情とか、そういったものを表しているのであろう。
しかし、そのシャドーはそれぞれの登場人物(スノッブな女性を取り合う二人の男性)と、ありきたりにパラレルだったりシンクロしていないところが、この作品のおもしろいところ。シャドーたちは元の主人公から離れて、シャドー同士でも踊ってアンサンブルを奏でる。とてもいいニュアンスが出ていた。さらには、「フレームの精」といった趣のダンサーがソロとバ・ド・ドゥを踊り、これもクールなおもしろさが表現されていて、舞台に惹き込まれた。
しかし、後半になるとファルスに主眼をおいた展開となり、少々、鼻白んだ。フレームに収まろうとする自分とフレームから外れてしまう自分との対話はなくなり、女性に捧げる赤い薔薇を競い合ったりする女性へのアプローチ合戦のおもしろさを描くばかりとなり、あまり笑えなかった。
それぞれのダンスは丁寧に良く作られていたし、音楽とも響き合っていた。バッハの「6つのパルティータ」を中心とした選曲やバロツク風の衣装、ダンスの構成には細やかな配慮も行き届いていて良かった。ただ、表現の異なったレヴェルに振付が迷い込み、ダンスによるバロック調のファルス(キリアンには傑作がある)は、成功したとは言いにくい。前半がおもしろかっただけに、後半崩れたのが惜しまれる。

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tokyo1603e_04.jpg 『L'heure bleue』撮影:鹿摩隆司

ウヴェ・ショルツの『べートーヴェン 交響曲第7番』は、2013年7月に東京シティ・バレエ団により日本初演され、2014年3月に「NHKバレエの饗宴」でも再演されている。少々、上演の間隔が詰まっているためだろうか、初演時のような感興はもよおさなかった。というのも動きが運動として自立しているように感じられなかったからである。動きは、音楽にすっかり依拠し、舞台のヴィジュアルは、バレエのパと照明と装置、衣装がデザイン的に構成されている。ダンスにムーヴメントとして自立した運動を感じとることができなかったために、音楽とダンスのダイアローグもまた聞きとることができなかった。
昨年末に、やはりウヴェ・ショルツ振付のソロ作品『春の祭典』を観たことも関係しているかも知れない。振付家の内面を直視させられて、少々、オーケストラと踊る舞台についても考えを改めなければならないのではないか、とも考え始めた。今回は中途半端な形で終えて申し訳ないのだが、このことはまた、改めて書かせていただきたい、と思っている。
(2016年1月30日 新国立中劇場)

tokyo1603e_05.jpg 『ベートヴェン 交響曲第7番』第1楽章 tokyo1603e_06.jpg 『ベートヴェン 交響曲第7番』第2楽章
tokyo1603e_07.jpg 『ベートヴェン 交響曲第7番』第3楽章 tokyo1603e_08.jpg 『ベートヴェン 交響曲第7番』第4楽章