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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2016.03.10]

ルンキナとスクヴォルツオフをゲストに迎え、牧阿佐美バレヱ団のソリストたちが輝いた『白鳥の湖』

牧阿佐美バレヱ団
『白鳥の湖』三谷恭三:演出・振付(プティパ、イワノフの原振付、ウェストモーランドの新制作に基づく)

牧阿佐美バレヱ団が創立60周年記念公演の一環として『白鳥の湖』を上演した。ゲスト・ダンサーは、スヴエトラーナ・ルンキナとルスラン・スクヴォルツォフという二人のロシア人ダンサー。ルンキナはオデット/オディール、スクヴォルツォフがジークフリート王子を踊った。

tokyo1603c_1337.jpg 撮影/鹿摩隆司(すべて)

ルンキナは、ボリショイ・バレエのプリンシパルとして踊った後、カナダ・ナショナル・バレエのプリンシパルを務めている。細身で長身、小顔で手脚が長い。一見ちょっと暗く感じられるスラブ人らしい目鼻立ちの美人。彼女のいつもの表情が、私にはそのまま魔法で白鳥の姿に変えられた女王の悲しみを湛えているかのように思われ説得力があった。しかしオディールはどう演じるのか、と思ったら、微かに薄笑いを浮かべ、巧みにロットバルトと眼差しを交し、上手く役を作っていた。身体を大きく使った表現が得意らしく、大白鳥を想起させる舞台姿がなかなか見事だった。
スクヴォルツォフはボリショイ・バレエの現役ばりばりのプリンシパルダンサー。少し茶色がかった黒髪のスマートな佇まいを持つ。あまり大きくこれ見よがしの表情を作らないが、しっかり感情を伝える技量を備え心得ている。第一幕の王子として登場するシーンもゆったりと、ロイヤル・ファミリーの一員らしい落ち着きはらった姿を自然に演じて見せた。対称的に第3幕では、初めて愛を知ったのに、ここで花嫁を選ばなければならないという微妙な立場への憂鬱を表情に浮かべながら登場した。あまり大きく動いてみせることは少ないが、ゆるやかな動きでも十分に説得力があったのは、自身の身体の表情を知悉しているからだろう。ただ椅子に腰掛けている時の脚の格好は、少々不用心で王子らしくなく見えてしまった。

この『白鳥の湖』のヴァージョンは、いつみても第3幕の冒頭のパ・ド・カトル(日髙有梨、米澤真弓、清瀧千晴、坂爪智来)が良い。格調高い貴族文化を表わした踊りで、花嫁選びの式典の華やかさを彩っていた。
牧阿佐美バレヱ団のソリストたちは、第3幕のディヴェルティスマンを踊って盛り上げた。ルースカヤは青山季可だったが、いつも主役を踊っている責任感から解放されたかのように、ゆるやかに明るく踊ることを楽しんでいるようでとても良かった。菊地研はフォン・ロットバルトを、二人のロシア人ダンサーと落着いて堂々と踊った。
古典を大切にするウエストモーランドのスピリットが継承されていて、全体のバランスが良く、品格を感じさせる『白鳥の湖』である。
(2016年2月7日 文京シビックホール)

tokyo1603c_1291.jpg ルンキナ、スクヴォルツォフ tokyo1603c-4393.jpg 青山季可(ルースカヤ) tokyo1603c_1496.jpg 織山万梨子(ナポリターナ)
tokyo1603c_1015.jpg 1幕tokyo1603c_1673.jpg 3幕
tokyo1603c_1601.jpg ナポリターナ(6日公演)tokyo1603c_1363.jpg パ・ド・トロワ
撮影/鹿摩隆司(すべて)