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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2015.07.10]

瑞々しく初役のリーズを演じた中川郁と落着いた演技でコーラスを踊った菊地研、牧阿佐美バレヱ団『リーズの結婚』

牧阿佐美バレヱ団
『リーズの結婚』フレデリック・アシュトン:演出・振付

牧阿佐美バレヱ団が、2016年の創立60周年に向けて開始した記念公演シリーズの第2弾は、日本ではこのバレエ団だけが上演を認められているフレデリック・アシュトンの傑作『リーズの結婚』(原題:『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』)。第1弾では男性コーラスグループとの初コラボレーションなど、“冒険”もしたので、今回は手堅い演目にしたのだろう。
『リーズの結婚』は、フランスの田園を舞台に、農場主の未亡人シモーヌの愛娘リーズが、母の決めた裕福なぶどう園主トーマスの頭の弱い息子との結婚に反抗し、恋仲の農夫コーラスとの結婚を勝ち取るまで描いた作品である。
ニワトリたちのユーモラスなステップなどの独創的な踊りが織り込まれ、コミカルなマイムも挿入され、若い二人の愛を軽妙に生き生きと描いている。ダブルキャストの初日は経験豊かな青山季可と清瀧千晴のペアで、2日目は新進の中川郁とベテランの菊地研のペア。中川が初役に挑んだ2日目を観た。なお、シモーヌとアランは両日とも保坂アントン慶と細野生がそれぞれ演じたが、細野にとってアランは初役だった。

tokyo1507d_3525.jpg 中川郁 撮影/山廣康夫

開演を告げるように雄鶏の鳴き声が響き、雄鶏と雌鶏たちによる、つま先の動きを誇張した愉快なダンスで楽しませた。
中川は踊りも演技も爽やかで瑞々しく、おちゃめでお転婆なリーズを好演。一つ一つのステップを丁寧にこなし、幕開きの中庭でのコーラスとのデュエットには娘らしい恥じらいと喜びを込め、麦畑ではコーラスと伸びやかに安定感のある踊りをみせ、バランスも長く保っていた。コーラスとの結婚生活を想像するマイムも微笑ましかった。ただ、きちんと踊ることに意識がいってしまうようで、共演者との演技のやりとりがややせわしなく、アランに対しても未消化な部分が見受けられたが、これは場数を踏めば解決するだろう。

相手役の菊地はさすがにこなれた演技で中川をリード。リボンを使ってのリーズとのやりとりも滑らかで、恋するエネルギーを柔らかなジャンプで伝えた。アラン役の細野は、顔には感情を出さず、誇張された朴訥な身振りでおかしみを表していた。シモーヌの保坂は場が進むにつれ、演技も自然体になっていった。木靴の踊りでは達者な足さばきを見せた。ほかにも、カラフルなリボンをつけたポールを立てての村人たちの踊りなど、多彩な踊りが盛り込まれているが、繰り返し上演してきた作品だけにとてもこなれていた。総じて、踊る側も観る側も楽しんだ舞台だったといえそうだ。
(2015年6月14日 ゆうぽうとホール)

tokyo1507d_3657.jpg 菊地研 tokyo1507d_3642.jpg
tokyo1507d_3649.jpg tokyo1507d_3652.jpg
tokyo1507d_3605.jpg 牧阿佐美バレヱ団『リーズの結婚』 撮影/山廣康夫(すべて)