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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2015.06.10]

チャイコフスキーの原典に立ち返って演出・振付けられたモスクワ音楽劇場の『白鳥の湖』

国立モスクワ音楽劇場バレエ団
『白鳥の湖』ウラジーミル・ブルメイスティル:振付・演出

チャイコフスキーの三大バレエといっても『白鳥の湖』と『眠れる森の美女』では、作曲の過程は異なっている。『眠れる森の美女』はプティパのシーンごとの指示にしたがって作曲されたが、『白鳥の湖』は元々チャイコフスキーが幼い姪や甥のために、いわば遊びのために創った家庭劇がその基となっているといわれる。

tokyo1506b_01.jpg © Arnold Groeschel

ブルメイスティルはチャイコフスキーの遠縁にあたるそうだが、『白鳥の湖』の改訂振付けを行うために原典であるチャイコフスキーの音楽に立ち返った。そして後世の振付家が変更する以前のチャイコフスキーが作曲した曲順に戻して、振付を行った。さらにチャイコフスキーが作曲したが葬り去られていた曲を発見し、音楽に加えた。
また、演出面では3人の道化を登場させたり、第3幕のデヴェルティスマンを、ロットバルトがジークフリート王子を籠絡するために、彼の手下たちに踊らせて魔術的世界を現出させた、という演出に再創造した。とりわけ第3幕の演出は、抜群の効果を生み、大いに迫真力を高めた。道化を複数登場させた点は、音楽とダンサーの身体の複雑な動きが共鳴しつつ進行するので、より強く舞台に惹き付けられるようだった。また道化が登場する1幕と3幕を、王子の心理を通して通底させる効果も生まれたと思われる。そしてまた、もう一度言うが、カンパニーのオーケストラともども来日したことが良い舞台を創ったことは間違いない。
そのほかにも、プロローグでオデットがロットバルトにさらわれて白鳥に変えられるシーンを作ったり、ラストシーンでは呪縛の解けた白鳥を人間の姿に戻すエンディングとするなどの工夫を凝らして演出している。

オデット/オディールはエリカ・ミキルチチェワ、ジークフリート王子はゲオルギー・スミレフスキというキャスティングだった。ミキルチチェワは愛らしい容姿を活かして、白鳥に変えられ人間に戻ることが許されない悲しみを表わした。3幕の黒鳥では、ややオデットとのコントラストが弱いようにも感じられたが、全体に安定した表現力を見せた。スミレフスキも落着いた踊りで、ロットバルトに振り回され翻弄されるジークフリートを演じながら、ラストシーンへと破綻なく踊りを繋いだ。全体に活力のある舞台だったし、カンパニーのフレンドリーな良い雰囲気も感じられた好感の持てる公演だった。
(2015年5月23日 東京文化会館)

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© Arnold Groeschel(すべて)