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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2015.01.13]

ロシアの妖精、オブラスツォーワとシュツットガルトの貴公子、ラドメーカーの初共演が実現

東京バレエ団
『くるみ割り人形』ワシリー・ワイノーネン:振付

東京バレエ団が創立50周年記念シリーズの第8弾として『くるみ割り人形』を上演した。ベジャール版ではなく、主人公のクララを大人が演じるオーソドックスなワシリー・ワイノーネン版である。今回は何と言っても、ロシアの妖精バレリーナと称されるボリショイ・バレエのエフゲーニャ・オブラスツォーワと、シュツットガルト・バレエ団きっての貴公子、マライン・ラドメーカーの初共演が呼び物だった。特にオブラスツォーワは、9月の『ドン・キホーテ』の客演をケガのためキャンセルしていることもあり、期待された。ついでだか、ラドメーカーは、2015年1月に故国オランダの国立バレエ団に移籍することが決まっている。もう一組の主役は、躍進目覚ましいバレエ団の若手、沖香菜子と梅澤紘貴が務めた。また、初めてプロジェクション・マッピングを導入するのも話題だった。

tokyo150d02_8837.jpg オブラスツォーワ、ラドメーカー
Photo/Kiyonori Hasegawa(すべて)

オブラスツォーワは、クララ役にぴったりの可憐な愛くるしい少女になりきっていた。しなやかに上体を動かし、柔らかな脚さばきでステップを踏む姿は、“妖精”を感じさせた。ラドメーカーは立ち姿も爽やかなくるみ割り王子で、脚のラインも美しく金髪を揺らせて軽やかにマネージュをこなした。ねずみを退治した直後の、恥じらいと喜びの交じったデュエットと、ふしぎの国での華やかなグラン・パ・ド・ドゥとで雰囲気を変えており、公演に華を添えてはいたが、初顔合わせでの “化学反応”が期待されたほど起こらなかったのが残念といえば残念。バレエ団のダンサーでは、ドロッセルマイヤー役の木村和夫が、メリハリの効いた演技とシャープな跳躍で舞台を引き締めていた。クリスマスパーティーで、きっちりと人形振りをこなしたコロンビーヌの岸本夏未ら、ふしぎの国の各国の踊りで、切れ味の良い踊りをみせたスペインの川島麻実子と柄本弾、足の甲の美しさやしなやかな脚さばきで印象づけたアラビアの渡辺理恵、勢いよく溌剌とロシアを踊った乾友子と原田祥博ら、それぞれ健闘していた。雪の精の女性群舞も良く揃い、美しかった。

tokyo150d01_8422.jpg Photo/Kiyonori Hasegawa

プロジェクション・マッピング(アート・ディレクター:村井保介)だが、序曲の演奏中に動き回るネズミたちやパーティの準備をする人たちの様子などが暗示的に投影されたほかは、場面が転換するシーンで想像をかきたてるように挿入された。雪で覆われた森林にオーロラを見せたり、ふしぎの国への旅で海を渡ったり、光まばゆい映像でクララの夢の余韻をとどめるなど、高度な技術が活かされ、結構、凝っていた。プロジェクション・マッピングを多用しすぎるのは考え物だが、今回はドラマの奥行を広げるような、ドラマの展開に沿った用い方だった。
(2014年12月19日 東京文化会館)

tokyo150d03_8847.jpg オブラスツォーワ、ラドメーカー tokyo150d06_8640.jpg オブラスツォーワ、ラドメーカー
tokyo150d05_8552.jpg tokyo150d07_8827.jpg 沖香菜子、梅澤紘貴
tokyo150d08_0014.jpg 沖香菜子、梅澤紘貴 tokyo150d09_8930.jpg
tokyo150d04_8535.jpg エフゲーニャ・オブラスツォーワ、マライン・ラドメーカー
Photo/Kiyonori Hasegawa(すべて)