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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2014.12.10]

鍵田真由美の清姫が次々と変身して、最後は圧倒的なパフォーマンスを見せるフラメンコ『道成寺』

鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団
『道成寺』佐藤浩希;演出・振付

鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団の『道成寺』。新しい音楽家----奄美大島民謡歌手の里アンナ、箏曲の山野安珠美、太鼓&安珍役の齋藤栄----3人も加えてスペクタキュラーな舞台が出現した。私は代々木上原のライブハウスで『狂い〜シギリージャ』のタイトルで昨年4月に観たが、今回は舞台は日本橋劇場となり、花道や迫りが備わり、舞台空間も数倍の広さとなった。

tokyo1412e_04.jpg (c) Hiroyuki Kawashima(すべて)

始まりは桜。舞台背景にも桜が描かれていた。
清姫(鍵田真由美)が僧、安珍に騙されたと知り追い掛け、日高川に遮られるシーンが津軽三味線と歌、入水して大蛇に変身するシーンが胡、笛が混じり、鐘(ここでは設えられた大太鼓)に隠れた安珍に迫るシーンは大太鼓と笛、と次々と楽器を変える音楽構成は見事だった。ほぼ完璧にドラマと踊りと音楽がアンサンブルとして流れるように融合していた。鼓手に安珍を演じさせるというアイディアも卓越している。さらに鐘を大太鼓に変えたことも、太鼓の響きがドラマのリズムを刻みながら情感がもりあがって行き、舞台の成功に大きく貢献した。
ラストは大蛇が大鐘の上にのぼる歌舞伎舞踊の演出を援用して、スペクタキュラーな舞台の締めにふさわしかった。

主人公の清姫が変身を繰り返す作品であり、衣装もまたよく考えられており、娘の清姫は、着物をアレンジしたように黒い帯を締め、裾に真紅をあしらいフラメンコのスカート状に広がるもの。これにフラメンコのシューズを履くから、ちょっと考えるとおかしく思うが、鍵田の闊達な脚には隙がなく自然だった。入水して大蛇になるまでに鱗を思わせるショール風。さらに濃い赤紫のワンピース、それを舞台上で踊りながら脱ぐと腕を露わにした銀色のワンピースが現れる。そして最期は純白のワンピースに長い長いフレアの尾が付いた大蛇の衣装となる。この変身歴だけでも多くのことを語っているが、ヴィジュアルが前述した音楽の流れとも連動しているので、いっそう艶やかに美しく見る者に迫ってくる。
鍵田は以前よりほっそりと引き締まり、しなやかさが増したかのよう。変幻自在の表現力は素晴らしい。演出家には失礼ながら、入水して大蛇に変身する演舞をコール・ドや水を表す布を使わずじっくりと演じさせて欲しかったという気持ちさえ感じた。代々木上原のライブハウスのようなスペースが極めて小さい舞台では、演出にも限りがあるが、逆にそれが踊りの表現力を極限まで引き出す、とうこともあるかも知れない。圧巻の舞台だったが、『狂い〜シギリージャ』も良かった、とも思った。
(2014年11月20日 日本橋劇場)

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tokyo1412e_06.jpg (c) Hiroyuki Kawashima(すべて)