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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2014.10.10]

オーチャードホールの歴史と伝統を祝う、吉田都、熊川哲也の『アルルの女』ほか

オーチャードホール25周年ガラ〜伝説の一夜〜
熊川哲也:総合監修、出演、吉田都、中村かおり、荒井祐子、堀内元ほか:出演

オーチャードホールの25周年を記念するガラ公演「伝説の一夜」が開催された。オーチャードホールは1989年9月に、バイロイト音楽祭を招聘し杮落としとして上演した。2012年には、熊川哲也を芸術監督に迎えている。

yokto1410c_1209.jpg 「ロミオとジュリエット」
中村かおり、遅沢佑介 撮影/瀬戸秀美

25周年ガラは、杮落としでも縁のあるワーグナーの歌劇『タンホイザー』より ”序曲”で開幕した。
舞台は黄金色で飾られたまばゆい装置。山本康介が振付けた、スモールとビッグのカップル7組が様々の組み合わせのフォーメーションをみせ、開幕を飾った。ガラのオープニングとして整った構成だった。続いて『タンホイザー』の”巡礼の合唱””歌の殿堂を讃えよう” が、二期会と藤原歌劇団の合唱部によって歌われた。
バレエの演目としては、ジャン=クリストフ・マイヨー振付『ロミオとジュリエット』のバルコニーのシーンを、中村かおりと遅沢佑介が踊った。中村かおりは1986年ローザンヌでプリ・ド・ローザンヌ・スカラシップを受賞した。熊川が東京開催のローザンヌ・コンクールでゴールドメダルを受賞する3年前のことだ。その後SABに入学し、ロイヤル・ウイニペグ・バレエ団で踊り、パシフィック・ノースウエスト・バレエに移籍、プリンシパルとして長く踊った。今年退団し、カンパニーのバレエ・スクールの教師となった、という。舞台はマイヨーらしいセクシャルな表現があり、ロミオが大地に大の字に寝そべるなど自由でヒューマンな味のある振付だった。
ヴェルディの歌劇『リゴレット』のアリアを錦織健と幸田浩子が歌った後、熊川哲也振付『シンプル・シンフォニー』も上演された。ベンジャミン・ブリテンの同名の曲の作品4に振付けたもの。三角形を様々に変形し組み合わせた抽象的な背景をバックに、3組のカップルが踊る。「3」が描き表わす世界を静かに落ち着いた美しさの中に描いた。平田桃子、加瀬栞、河野舞衣、伊坂文月、宮川大、吉田周平が踊った。
休憩の後は『ローエングリン』の第3幕の前奏曲。森麻季がヴェルディの歌劇『椿姫』の名曲を歌った後、熊川哲也振付の『パッシング・ヴォイス』を荒井祐子と堀内元が踊った。音楽はヨハン・パッヘルベルの「カノン」。舞台中央に置かれたソファーをめぐるように踊る。愛や苦悩など様々な生きていくことの問題に遭遇していく二人。時折、発声するポーズを織り込み、カノンの形式を踊る振付。荒井祐子も堀内元も経験のあるダンサーなので、動きのニュアンスも表わし、同時に人間の営みについての考察を示唆する舞台となった。
ヴェルディの『椿姫』から有名な”乾杯の歌”を、森麻季と錦織健が歌った。
そしてこの日のクライマックスは、共演は7年ぶりになるという吉田都と熊川哲也によるローラン・プティの名作『アルルの女』(音楽はジョルジュ・ビゼー)だ。心が離れやがて死へと向かう男性と、なぜ離れていくのか理解できない男心に慄然とする女性とのパ・ド・ドゥ。救いを見つけることができないところへと至る踊りだった。プティの振りをドラマティックに表わした熊川の熱演が喝采を呼んだ。
ラストは堀内充振付の『エフゲニー・オネーギン』ラリーナ・ワルツ(チャイコフスキー曲)を全員で踊り、「伝説の一夜」の幕は下りた。
(2014年9月4日 Bunkamura オーチャードホール)

yokto1410c_0086.jpg 「ロミオとジュリエット」中村かおり、遅沢佑介 yokto1410c_0403.jpg 「パッシング・ヴォイス」荒井祐子、堀内元
yokto1410c_0471.jpg 「アルルの女」吉田都、熊川哲也 yokto1410c_0560.jpg 「アルルの女」熊川哲也
yokto1410c_0593.jpg 「アルルの女」熊川哲也 yokto1410c_0964.jpg 「アルルの女」
yokto1410c_1133.jpg 歌劇「エフゲニー・オネーギン」より yokto1410c_1145.jpg 歌劇「エフゲニー・オネーギン」より
撮影/瀬戸秀美(すべて)