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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2014.09.10]

植田綾乃、谷桃子バレエ団の伝統を継承する『ジゼル』で見事にデビュー

谷桃子バレエ団
『ジゼル』谷桃子:総監督、ジャン・コラーリ、 ジュール・ペロー、マリウス・プティパ:原振付

谷桃子バレエ団の新人公演の『ジゼル』を初日8月15日金曜日に観た。これは芸術監督に斉藤拓が就任した最初の公演。植田綾乃がタイトルロールを踊って主役デビューを果たした。アルブレヒトは今井智也だった。

tokyo1409e_01.jpg 撮影/スタッフ・テス中岡良敬

植田はコンクールの入賞歴は多いのだがクラシック・バレエの大きな役は踊っていない。キャリアをみると谷桃子バレエ団の古典と創作シリーズで『ライモンダ』3幕のヴァリエーション、バレエ協会の地方公演で『くるみ割り人形』や『白鳥の湖』のパ・ド・トロワなどを踊ったとある。しかし、『ジゼル』全幕となると第2幕の冒頭以外ほとんど出ずっばり。コール・ド・バレエをリードするシーンもあれば、ソロのヴァリエーションも多い。全編を通して音楽に身体をのせられるか。そして何よりも表現力が問われ、舞台の正否はその双肩にのしかかる。新人のデビュー作だからといって、何かが許されるわけではない。
翌16日土曜日のジゼルは佐藤麻利香、アルブレヒトは檜山和久だ。佐藤は、既に『シンデレラ』のタイトルロールで主役デビューを果たし、第1回の新人公演で『白鳥の湖』のオデット/オディールを踊り、『くるみ割り人形』の金平糖の精を踊った経験もある。

tokyo1409e_04.jpg 撮影/スタッフ・テス中岡良敬

しかし植田綾乃は、ジゼル役をよく理解しよく踊った。デビューの舞台は成功だった。全体を通してバランスがよく、危うさを感じさせるところはなかった。ステップも表現も良く整えられており、さすが谷桃子バレエ団が見込んで期待をよせているだけある、と思った。サポートという意も込めてプリンシパルの今井智也をアルブレヒトに起用したという。デュエットで踊ると、舞台経験の差が自ず現れてしまう部分も無きにしもあらずだったが、よく頑張ってしっかりとパートナーシップを創った。
ひとつひとつのステップに、そして表現にもきちんとドラマに応じた気持ちが込められていた。特に第2幕では自身のイメージの中にあるジゼルを、しっかりと踊ることが出来たのではないだろうか。第1幕と第2幕を較べると、時折、ダンサーとしての統一感がどうかなと感じられた場合があったかもしれないが、全体としてはまとまっており、ダンサーとして観客に訴えるものがあった。体力的にもあまり不安はなかったのではないか、と推測する。ウィリとしてはちょっと元気が良すぎたという印象を残したかもしれないが、表現はきちんとできていた。細やかな表現はこれからどんどん深めていけば良い。今はまだ自身にも少女の面影が濃く、女性として母性的な魅力を発揮するとまではいかないが、やがて表現力が進化するにつれて魅力が花開くに違いない、と思った。良い新人が誕生したものだ。
アルブレヒトを踊った今井智也は、さすがに落着いて堂々とした踊り。特に第2幕では今井=アルブレヒトがこの舞台を支えている、とも感じさせた。ヒラリオン役の安村圭太も意欲的に良く演じ、アルブレヒトに対抗する人物像を舞台に描いて印象に残った。
谷桃子バレエ団の『ジゼル』は、どこかボリショイ・バレエの古風だが、しっかりとした骨格を持つヴァージョンを想起させる雰囲気があり、私はとても好きた。
(2014年8月15日 ゆうぽうとホール)

tokyo1409e_02.jpg 撮影/スタッフ・テス中岡良敬 tokyo1409e_05.jpg (16日公演)撮影/スタッフ・テス飯田耕治
tokyo1409e_06.jpg (16日公演)撮影/スタッフ・テス飯田耕治 tokyo1409e_07.jpg (16日公演)撮影/スタッフ・テス飯田耕治
tokyo1409e_03.jpg 撮影/スタッフ・テス中岡良敬