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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2014.08.11]

パリ・オペラ座のティボーとデンマーク王立バレエのダンサーを主軸にブルノンヴィル作品を上演

井上バレエ団
〈オーギュスト・ブルノンヴィルの世界〉:『コンセルヴァトワール』『ラ・シルフィード』(ブルノンヴィル:振付、フランク・アンダーソン&エヴァ・クロボーグ:再振付・指導)

井上バレエ団はデンマーク王立バレエ団との交流を通じてブルノンヴィル・スタイルの習熟に努めており、2010年からは、毎年、ブルノンヴィルのサマー・セミナーを開催している。その成果を見てもらおうと、〈オーギュスト・ブルノンヴィルの世界〉と題して、『ラ・シルフィード』と『コンセルヴァトワール』を上演した。「デンマークからの贈り物」という副題付きだ。前者は3年ぶり4度目、後者は6年振り2度目の上演である。ゲストとして、今や“常連”のパリ・オペラ座バレエ団のエマニュエル・ティボーのほか、デンマーク王立バレエ団からはエヴァ・クロボーグに加えて、プリンシパルのウルリク・ビルキエールと若手のヨン・アクセル・フランソンが招かれた。主要な女性のパートはダブルキャストが組まれていたが、その初日を観た。

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『コンセルヴァトワール』はもともと2幕のヴォードビルバレエだったが、現在、上演されるのは第1幕のバレエ学校の場面だけ。1820年代にブルノンヴィルがパリで受けたバレエ・クラスの様子を描いているというのが興味深い。バーを使っての基礎からセンター・レッスンへと進められるが、ダンサーにとっては、授業でマスターした技を見せるテストにも感じられて緊張するのだろう。最初の内はそろっていたが、少し乱れた人がいたのが惜しまれた。エリザの源小織とヴィクトリーヌの田川裕梨は卒のない演技をみせた。バレエマスター役で客演したビルキエールは、足先まで神経を行き届かせ、ジャンプ時の空中の姿勢もきれいに保ち、模範的な演技で存在感を示した。

『ラ・シルフィード』は、スコットランドの農村を舞台に、エフィーとの結婚式を控えたジェイムスが妖精シルフィードに魅せられたため、すべてを失ってしまう物語。これに、エフィーに横恋慕するグエンと、不遜なジェイムスに復讐をもくろむ魔女マッジが絡んで展開する。ジェイムスのティボーとラ・シルフィードの宮嵜万央里は前回も同じ役で共演しているので自然な演技。ただ、ジェイムスがシルフィードのキスで目覚めた時、二人の間に一瞬の感情のやりとりが欲しい気がした。ティボーは、自分をコントロールしきれないジェイムスの弱さや身勝手な一面を伝えていたし、キルトの裾を乱してのジャンプも軽快だった。宮嵜には妖精らしいたおやかな身のこなしが感じられたが、跳躍がもっとふんわり漂うようになればと思う。グエン役のフランソンが、エフィーの心を得ようと鋭く切り込む様やシャープな脚さばきが冴えていた。クロボーグは、前回同様、マッジ役ならではの凄みのあるパワーを発揮し、舞台を引き締めた。エフィーの西川知佳子には、グエンの愛を受け入れる心の変化をもっと繊細に伝えて欲しかった。妖精たちの軽やかな跳躍などには練習の成果がうかがえた。けれど、総じてマイムが型通りという感じだったので、音楽と一体となった滑らかさが加わるよう、さらに磨きをかけて欲しいと思う。
(2014年7月19日 文京シビックホール)

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