ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2014.07.10]

日本人舞踊家たちの過去の作品に触れ、そのスピリットと対話した今日の舞踊家たち

新国立劇場2013/2014ダンスシリーズ
DANCE ARCHIVES in Japan ---- a Door to the Future
ダンス・アーカイヴ in Japan ----未来への扉----

「ダンス・アーカイヴ in Japan」として、およそ100年くらい前から、いわゆる
<洋舞>と呼ばれて日本人が受容し始めた頃、盛んに創られた日本人舞踊家の作品がいくつか復元された。
まずは、青森県出身でマリー・ウィグマンの舞踊学校で学んだ経験を持つ江口隆哉の振付による『日本の太鼓』(1951年初演)。岩手に伝わる有名な伝統芸能「鹿踊り」に基づく舞踊作品。背中にさらさという竹で編んだ長い竿を2本差し、腰に付けた太鼓を打ち鳴らしながら、立派な角が付いた鹿頭を冠って勇壮に踊るもの。東北あるいは愛媛に伝わる郷土芸能には、様々な流派があるが、江口は四つの章によって構成している。音楽は伊福部昭。
ここで企画運営委員の片岡康子から企画の説明があった。

tokyo1407g_01.jpg 「ピチカット」撮影/鹿摩隆司

次に伊藤道郎がロンドンで踊って名を上げたことで知られる『ピチカット』。全くステップを使わず、固定した身体の動きとそれを極度に増幅した影によるダンス。意表を突いた構成が、20世紀初頭のロンドンの上流階級の人々を驚かせた。音楽はドリーブの『シルビア』より「ピチカット」。1916年にニュ−ヨークで初演したダンスを復元している。
高田せい子の『母』。これは初見だったが、母親の造形に説得力があった。音楽はショパン。1938年の初演である。
タンゴ三題として伊藤道郎(1927年、音楽イサーク・アルベニス)、小森敏(1936年、音楽アルベニス)、宮繰子(1933年、音楽エドガルド・ドナード)作の3つのソロが踊られた。タンゴの動きの特徴を捉えてまとめたもの。それぞれ違いはあったが、ダンサーの身体性が如実に現れた。宮繰子の「タンゴ」は、中村恩恵が踊ったが、まさに現代人の身体による踊りだったが、振付の時代性を越えて、観客にアピールしていた。
続いて檜健次の『BANBAN』。男女9名が田植えの時に被る菅笠を被り、和風味を加えたピエロのような衣装で踊った。この作品は比較的新しく1950年帝劇初演、つまり戦後に作られたものだった。そのためだろうか、それまでに上演されたものと異なり、諧謔というか、緊張感とは対照的な緩んだユーモアが表現に表れていた。プログラムによれば、「人間の黄昏10章」という作品の中の1章だそうだ。9人のダンサーを使っているにしては、今日から見れば、個々の動きもフォーメーションもシンプルだが、生命を裏から見ているような面白味はあった。

最後は石井漠の2作品。『食欲をそそる』(1925年)と『白い手袋』(1939年)。「舞踊詩」を標榜した舞踊家として知られる石井漠。人間というものをスケッチし、追求した作品だった。意外と色褪せることなく時代を超えて訴えるものがあった。特に加藤訓子によるパーカッションが素晴らしく、彼女の音が持つ現代性がこの2作品を甦らせた面もあるのではないだろうか。
そして最後に、新国立劇場のダンスシリーズから生まれた作品として、平山素子の振付による『春の祭典』(2008年、音楽ストラヴィンスキー)が踊られた。
(2014年6月6日 新国立劇場 中劇場)

tokyo1407g_02.jpg 「母」撮影/鹿摩隆司 tokyo1407g_03.jpg 「食欲をそそる」撮影/鹿摩隆司