ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2014.07.10]

明るく明快で、爽快感のあふれるアメリカン・バレエによるトリプルビル

NBAバレエ団トリプルビル
『ガチョーク賛歌』リン・テイラー・コルベット:振付、『葉は色褪せて』アントニー・チューダー:振付、『ブルッフヴァイオリン協奏曲第一番』クラーク・ティペット:振付

NBAバレエ団が『ガチョーク賛歌』(音楽:ルイス・モロー・ガチョーク、振付:リン・テイラー・コルベット)、『葉は色褪せて』(音楽:アントニン・ドヴォルザーク、振付:アントニー・チューダー)、『ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第一番』(音楽:マックス・ブルッフ、振付:クラーク・ティペット)というアメリカン・バレエによるトリプルビルを開催した。

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どの曲も日本の舞台で踊られることは多くないが、『ガチョーク賛歌』と『ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第一番』は、日本のバレエ団が上演するのは初めてとなるという。

『ガチョーク賛歌』は、ブロードウェイ・ミュージカル『スウィング!』などで知られるリン・テイラー・コルベットの振付。それぞれ楽しげなタイトルのついた6曲で構成されている。アメリカのバレエらしく、明るく自由な動きで、ソロ、男女のデュエット、女性のトリオ、男性のデュエット。そして最初は6人、ラストは全員で踊る、というダンス構成だ。動きもギャロップやロマンチックな動き、ユーモラスなものなど、振りも軽快で明るく、爽快な雰囲気でまとまっている。フォーメーションにはさほどこだわらず、軽くメロディーとリズムを表していて、深刻さはない。シンプルな感情の変化が心地良く感じられた。ABTやコロラド・バレエ団で活躍したサンドラ・ブラウンが指導した。

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チューダーの代表作のひとつ『葉は色褪せて』は、実に美しい愛のデュエット集だった。まず、ロングドレスの一人の女性が、ゆっくりと思い出をかみしめるような面もちで舞台を横切る。すると下手から男女のダンサーがゆっくりと登場し、様々に踊るうちに、一組のカップルが長い素晴らしい愛のパ・ド・ドゥを踊る。これは二度と取り戻すことの出来ない愛を歌っているのだ。むろん、だからこそ一際美しい。色褪せた葉が、茂れる青葉の時代を懐かしく慈しんでいるのだ。ドボルザークの美しい弦楽四重奏と共振しつつ、奇をてらわない当たり前のパを駆使して、天才的な表現力、芳醇な感情の起伏を造形する。観客もダンサーも誰しも、決して忘れることの出来ない愛の思い出が、こころに刻印されているだろう、それを今、改めて思い出し、二度と体験出来ない至福の時として追体験する・・・。
元ABTのプリンシパル、 アマンダ・マッケローと やはりABTのソリストだったジョン・ガードナー夫妻が指導した。

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『ブルッフヴァイオリン協奏曲第一番』は、元ABTのプリンシパルで、この作品を振付けた後、急逝したクラーク・ティペットの作品。
シャンデリアが飾られた舞台。格調たかい情感を描く音楽とともに、華麗なチュチュを纏った四組のプリンシパルと男女のコールドが、三つのパートを踊った。ダンサーはそれぞれが音楽と作品を良く理解しようとしていて、それが踊っている表情の中にも感じられた。適切な指導者を招いてリハーサルを重ねた結果だろう。ニュ−ヨーク・シティ・バレエ団で20年間踊り、その後ABTでバレエ・マスターを努めたデビット・リチャードソンが指導した。
アメリカのバレエといえば、バランシンに訓練を受けたダンサー以外は、どうしてもミュージカルを観ているように感じてしまう、といった偏見に囚われがちだ。しかし、こうした試みをもっと密度を濃く継続して、日本にも何らかの形で定着させることができれば、素晴らしいことだ。とりわけ、チューダー作品をレパートリーにすれば、ダンサーの芸術性により良い影響をあたえるはずだと思われる。
(2014年6月21日 メルパルクホール)

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