ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2014.06.10]
♪バレエ昔も今も♪BALLET OLD AND NEW♪
先日、新国立劇場で、「ダンス・アーカイヴ in JAPAN」という公演が行われた。伊藤道郎、高田せい子、小森敏、宮操子、檜健次、石井漠など、日本のダンスの歴史に名を残し、現在も門下生たちがそのダンスを継承している舞踊家の作品が、新国立劇場の舞台で上演された。この企画は来年、3月に第2回を予定していて、新たな舞踊家作品との取り組み始まっているようだ。
また、国立新美術館では、「魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展」が、6月18日から9月1日まで開催される。 せっかくだから、この時を捉えて、過去のダンスについての考えをまとめてみるのも意味あることかも知れない。
ダンスは舞台の上で踊ると同時に消えていく、という宿命を負った芸術だから、極端にいえば「過去のダンス」などというものはあり得ない、とも言える。実際、モーリス・ベジャールなどは、過去に囚われることなく常に未来を指向して、今を生きるのが、舞踊家である、と、常々、語っていた。だから、彼は「20世紀舞踊団」というカンパニーを創設して活動していたのだ。
しかし、例えば今日の私たちは、ニジンスキーの『薔薇の精』の衣装を見て、20世紀初頭の人々関心を一身に集めた希有なダンサーのことを、言葉ではなく身体で感じとることができる。そして、ニジンスキーと対話して、想像の中で踊るのだ。これもまた、ひとつの舞踊体験である。
しかしそこで、ただひとつ確かなことは、これは頭で憶え込もうとする「お勉強」とは違う、ということだ。その点を忘れず、過去のダンスとしっかり向き合っていきたい、そう思っている。

堀内元・堀内充がそれぞれ楽しい2作品披露した、「バレエ・コレクション2014」

堀内元・堀内充 Ballet COLLECTION 2014
『ジャズコンポとオーケストラの会話』『Flow song』堀内充:振付
『Once in a Blue Moon 』『More Morra』堀内元:振付

「堀内元・堀内充 バレエ・コレクション2014」公演は、男女18名のダンサーのシルエットで幕が開いた。ふたりの父・堀内完のお気に入りの『ジャズコンポとオーケストラの対話』(ハワード・ブルーベックの曲)を基に、堀内充が振付けた作品で、堀内元と堀内充が20年ぶりに同じ舞台に立つ公演が始まったのだ。

tokyo1406a-031.jpg 『ジャズコンポとオーケストラの会話』撮影:木本 忍

スタッカートな動きをアクセントにした、モダンで明るく颯爽とした動き。背景が、昼から月明かり、星空、そして暗闇というふうに変化する中で、1対3や3組のペアによる踊りなどが、軽快なテンポで繰り広げられる。力みや無理がなく、滑らかでスムーズな踊りだ。ダンサーたちは、前半の白に黒いラインが入った衣装から、後半は黒に白いラインが入った衣装に着替えた。オーケストラに合わせたフォーメーションの華やかな動きもよかったが、やはりジャズの自由な心が楽しくなる動きが良かった。構成にも適度の変化が感じられて飽きさせず、音楽と動きのバランスがとれており、洗練された自由が心地良かった。ただひとつひとつのシーンの重さが同じくらいだったので、テンポは良かったが少し物足りない気もしないではなかった。全体のバランスが難しいところだが、元々が父上の作品だったから、少し気を使い過ぎたのかもしれない。
『Flower song』は、ジョルジュ・ビゼーの曲を使ったデュエット。ブランコに揺られていた女性(行友裕子)が垣間見た幻影だろうか、闇の中から黒い衣装の充が現れて踊る。速いピルエット、充の俊敏な速い動きに魅せられた。ちょっと『薔薇の精』を思わせる小品だが、もっと大人の愛のメルヘンという印象だった。

tokyo1406a-777.jpg撮影:木本由紀子

サティの曲で踊る『Once in a Blue Moon』は、堀内元が一人で気分良く踊っていると、バレリーナが現れる。一緒に踊るうちに彼女は消え、また現れる……。ダンスに没頭していたら、ダンスの精に出会った、といった堀内元の人生のひとときを、さり気なくユーモアを織り込んで見せた素敵な作品だった。堀内元のダンスを踊ることの喜びが、自然にあふれる踊りがこの上なく楽しかった。バリシニコフを彷彿させるディテールまで神経が行き届いた細やかな表現が作る踊りが見事。あの小柄な身体でゆうゆうとソロを踊って、舞台全面を充実した空間に変貌させ、観客を魅入らせた実力はさすが。
最後は堀内元振付の『More Morra』。音楽はJoe Morra。プリンシパルは小川友梨、持田耕史。パーカションを主体とした音楽。3つのパートに分かれていたが、最初は1組対6組のペアなど豪快な踊りが見られた。そして音楽がドラムのソロになると、舞台中央のスポットに浮かび上がった小川のソロ。ここも思い切った変換が成功している。このパートでは1対6の編成を組んだ女性ダンサーの踊りが印象に残った。
最後のパートは、真っ赤な照明の中の踊りが、強烈な音とともに舞台全面が白色灯の照明に変わり、再び真っ赤な光に戻る、という、際立ったコントラストを見せ、日常と非日常、現実と幻想といった二元的な往来の中でダンスを展開した。休憩前に踊られた、『Once in a Blue Moon』とはまた、趣の異なった力感が漲る振付だった。Morraの音楽を超える大胆な動きの構成を創って、友人の音楽家Morraに、さらにクリエイティヴな刺激を与える舞台だった。
堀内元・堀内充の舞台を観るたびに思うのだが、これ見よがしの演出や振りがなく、無駄な力の抜けたダンスで気持ちが良い。人間やはり余裕である。
(2014年5月30日 めぐろパーシモンホール)

tokyo1406a-749.jpg『More Morra』撮影:木本 忍