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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2014.05.12]

石井竜一、前田新奈、キミホ・ハルバート、3人の新進振付家の作品を上演、バレエ協会「バレエの夕べ」

日本バレエ協会「バレエの夕べ」
『Chaconaー チャコーナ ー』石井竜一:振付、『続・いのちでんでこ』前田新奈:振付、『真夏の夜の夢』キミホ・ハルバート:振付

「バレエの夕べ」、日本バレエ協会の新進バレエ芸術家育成支援事業で、文化庁の委託事業となっている。

tokyo1405e01.jpg 『Chaconaー チャコーナ ー』
撮影:飯田耕治(スタッフ・テス)

トリプルビルの一作目は石井竜一振付『Chaconaー チャコーナ ー』は、2000年の日本バレエ協会公演で上演された作品の改訂版。チャコーナ(仏語ではシャコンヌ)は、16、17世紀のスペイン舞踊曲のこと。シャコンヌは元は中南米で生まれたがスペインに持ち込まれ、フランス、ドイツなどでも流行したといわれる。そうした歴史の中で、スペインのバロック音楽としてのシャコンヌという意を込めた作品だと思われる。ホセ・ミゲル・モレーノとオルフェニカ・リラによる「ドン・キホーテのための音楽」から12曲を選んで構成している。
動きは群舞が中心で、バレエのパを叙情的に使い、流麗な流れを作っている。フォーメーションも巧みで、横の列を組み込み、背景に地平線を感じさせておおらかなスペインの大地を眺めているかのよう。ホリゾントの赤を基調とした抽象模様も雰囲気に良く合っていた。パ・ド・ドゥ、男性のトリオ他の群舞の編成もまたうまく、振付の総合的なレベルは高い。ただ全体の流れはやや起伏に欠ける気がしないでもなかった。もっと大胆な変化を持ち込んでもよいのではないか、という気もした。

tokyo1405e02.jpg 『Chaconaー チャコーナ ー』
撮影:飯田耕治(スタッフ・テス)
tokyo1405e04.jpg 『続・いのちでんでこ』
撮影:飯田耕治(スタッフ・テス)
tokyo1405e03.jpg 『続・いのちでんでこ』
撮影:飯田耕治(スタッフ・テス)

次は前田新奈の『続・いのちでんでこ』。昨年のバレエ協会の「バレエクレアシオン」で上演したものの続編。基本はバレエだが、セリフあり、歌あり。出演者が喋り、歌っているところが、率直な印象を与え好感がもてた。大津波の災害を受けた東北に住む人たちの生と死、そこに込められる爆発的なエネルギーを闊達に描いた。有名な獅子神楽や民衆の踊りが日本のリズム感覚とともに登場する。岩手の民話「雪姫」を隠喩として、死者と生者がともに「デンデケデン」のリズムで繋がっていく、という東北の「祭り」の根源を明らかにする舞台だった。被災者にインタビューを繰り返して台本を創った、というだけあって、実感的・具体的なエピソードが際立った。東日本大震災と真正面から向き合った作品として、深い印象を刻みこまれた思いである。

最後は、キミホ・ハルバートの新作『真夏の夜の夢』、音楽はメンデルスゾーン。職人たちの芝居の部分をカットして、オベロン(山本隆之)とタイターニア(本島美和)を中心として妖精たちの話を構成している。ヘレナとデミトリウス、ハーミアとライサンダーは森に迷い込んできた人間の恋人たちであり、ボトムは一番出来の悪い妖精という設定とされている。
キミホの創る舞台は、情感の通った人間的な雰囲気が感じられるものとなる。この作品も、基本となる喜劇の設定を踏まえながらも、まるでメンデルスゾーンの曲を楽しむような振付だった。本島、山本、福田圭吾(デミトリウス役)といった、共に新国立劇場の舞台で慣れ親しんだダンサーが中心だったからかも知れないが、やはりキミホのスタイルがダンサーたちにも影響を及ぼしているのではないか。
(2014年3月26日 ゆうぽうとホール)

tokyo1405e05.jpg 『真夏の夜の夢』撮影:飯田耕治(スタッフ・テス) tokyo1405e06.jpg 『真夏の夜の夢』撮影:飯田耕治(スタッフ・テス)