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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2014.05.12]

ビントレーの洗練されたセンスと美意識が際立った『ファスター』『カルミナ・ブラーナ』公演

新国立劇場バレエ団
『ファスター』『カルミナ・ブラーナ』デヴィッド・ビントレー:振付

『ファスター』『カルミナ・ブラーナ』というデヴィッド・ビントレー芸術監督の振付作品2作を、新国立劇場バレエ団が上演した。

tokyo1405d_01.jpg 『ファスター』撮影/鹿摩隆司

『ファスター』は2012年のロンドン・オリンピックを祝して創られた作品で、日本初演となる。音楽はオーストラリア出身のマシュー・ハイドソン。多彩鮮烈な現代的な曲で、ベックス・アンドリュースの衣裳とピーター・マンフォードの装置・照明とともに、この作品を印象を際立たせている。
闘う(小野絢子、福岡雄大)、投げる(福田圭吾、米沢唯、寺田亜沙子)、跳ぶ(本島美和、菅野英男、奥村康祐)、シンクロ、マラソン、そしてチームA、Bというふうに分けられたグループが、それぞれの機能美を競って踊る。
アスリートが競うことで生まれる美を、アーティストがアートに変換して表わす訳だ。それは例えば、競技場の中でランダムに同時多発しているものが、有機的に構成されるということになる。全体を通してビントレーらしい動きとヴィジュアルのセンスが美しかった。新国立劇場バレエ団のダンサーたちは、プリンシパルからコール・ドまで、よくビントレーの作品を理解して踊っていた。

『カルミナ・ブラーナ』は、ビントレーが以前から振付けたいと温めていた題材で、1995年にバーミンガム・ロイヤル・バレエ団の芸術監督に就任して、最初に創った作品だという。音楽はカール・オルフの著名な曲で、プロローグともいうべき運命の女神フォルトゥナの曲以降を「春」「居酒屋にて」「求愛」という3部構成としている。ビントレーはこれを現代に置き換えて舞踊化している。
運命の女神フォルトゥナ(湯川麻美子)は、ヒールを履いて女性的なるものを象徴するように艶かしく踊る。世界をまるごと魅了してしまうかのようだ。ここから3人の神学生(菅野英男、八幡顕光、タイロン・シングルトン)を中心に、信仰と堕落、愛と欲望の苦悩を、いささかの皮肉とユーモアをまじえて描かれる。丸焼きの白鳥・ローストスワンなども登場して、ビントレー流のブラックな表現もおもしろかった。今シーズンで任務が終了するのが惜しまれる、ビントレーのスパイスのよく利いた舞台だった。
(2014年4月19日 オペラパレス)

tokyo1405d_03.jpg 『ファスター』 tokyo1405d_04.jpg 『ファスター』 tokyo1405d_05.jpg 『ファスター』
tokyo1405d_02.jpg 『ファスター』 tokyo1405d_06.jpg 『ファスター』
tokyo1405d_07.jpg 『ファスター』 tokyo1405d_08.jpg 『カルミナ・ブラーナ』
tokyo1405d_09.jpg 『カルミナ・ブラーナ』 tokyo1405d_10.jpg 『カルミナ・ブラーナ』

撮影/鹿摩隆司(すべて)