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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2014.03.10]

家族と疑似家族が繰り広げる奇々怪々の集団劇、ピーピング・トムの『フォー・レント』

Peeoing Tom ピーピング・トム
『A Louer/フォー・レント』ガブリエラ・カリーソ、フランク・シャルティエ:構想・演出・振付

ベルギーのアラン・プラテル率いるLes Ballet C. de la B.のメンバーから独立して、ガブリエラ・カリーソ、フランク・シャルティエがピーピング・トムを結成。『Le Jardin/ガーデン』『Le Salon/サロン』『Le Sous Sol/土の中』の3部作および『ヴァンデンブランデン通り32番地』などを発表している。日本でも『Le Sous Sol/土の中』『ヴァンデンブランデン通り32番地』を上演してきた。どの作品も閉鎖された濃密な空間を設定し、その中で繰り広げられる家族とも疑似家族ともとれる集団の奇妙な行動を見せるものだ

tokyo1403c_140.jpg 撮影:片岡陽太

今回、上演されたのは2012年に初演された『A Louer/フォー・レント』。
かつては貴族が暮らしていたような古い屋敷が舞台。豪華なソファが数点とテーブル、椅子、ピアノが置かれ、厚いカーテンで囲まれているが、上手には不透明のガラスが組み込まれたドアがあり、2階の部屋と階段も薄暗がりの中に見える。ここに棲むマダムと執事、恐らくは息子と思われる青年、家族かゲストかはわからないが、老いたオペラのプリマと彼女を崇拝し追いかけ回す老人、さらに主人と思しき白髪の老人が、亡霊屋敷さなが奇々怪々のパァフォーマンスを繰り広げる。登場人物は生きているのか、それともこの屋敷に棲むゾンビなのか不明だが、一家の中心はマダムと執事だ。一瞬、ビリー・ワイルダーの『サンセット大通り』のグロリア・スワンソンとエリッヒ・フォン・シュトロハイムを想起させるが、そこまで具体てにな設定はなされていない。
なぜか、この部屋には執事の肖像画が掛けられている。マダムがソファを動かすと、ゴキブリさながら人間が這い回る。執事は全身の関節を逆に折り曲げるような、普通の人間では思いもよらないようなぐちゃぐちゃな動きをみせる。また、ドアをくり返し同じ出入りを繰り返す動きも多用されていた。

tokyo1403c_582.jpg 撮影:片岡陽太

マダムは常にソルジ、ソルジと執事に呼び掛けるが、コーヒーを煎れてくれ、と言う以外の用事はなさそうだ。そしてどうやら、マダムの潜在的性的関心が執事に向けられているよう。その分、老主人の影は薄い。しかし、執事は時空間をジャンプするかのように動き回り、分裂するし捉えどころがない。老プリマはアリアを歌い、老崇拝者はしっかりとサポーターのごとく密着。やがて2階の一室で愛し合う。息子と老主人は白いパンツひとつの姿でウロウロするばかり。
ついにはマダムは執事とセックスするが、執事は巧みに二人に分裂する。マダムは執事2とセックス。このシーンは秀逸で、二人は絡み合ってフロアを転げ回るが、途中でマダムがすり抜けても執事2はエアセックスを際限なく続ける。さらにまたソファの上でことにおよんでいると、執事2はソファの間から消え失せる。驚き探すマダムが笑いを誘った。まるで亡霊と交わる映画『雨月物語』の逸話のようだった。ここがこの亡霊集団劇のハイライトだろう。
ラストは主人がピアノの弾き語りでラブソングを歌い、全員で聴き拍手を贈る。ここでマダムは執事1に迫るが、彼は丸まってソファの中にはまり込んでしまう。そして歌い終わった主人が息絶え、物語は終わるのである。
ゴール・ドはこの公演のために募集した日本人が出演していた。
全体に統一感のある構成で、時空間が変形したり歪んだりする様を表すような極度な変則的な動きが、おもしろかった。ホラー映画とブラックな味わいのコメディを混ぜ合わせたような印象だった。ただ例えば、アラン・プラテルの作品と比べても、演劇的構成が主体であり、動きは二次的に表現を補足しているのではないだろうか、そう思った。
(2014年2月17日 世田谷パブリックシアター)

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tokyo1403c_667.jpg tokyo1403c_677.jpg
撮影:片岡陽太(すべて)