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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2013.03.11]

獅子を踊る森山開次と能管と和太鼓が共鳴して神秘的な浄土のイメージが浮き立った

伝統と創造シリーズ vol.5
第1部「石橋」(半能)
第2部ダンス『Shakkyou』森山開次:演出・振付・出演、津村禮次郎:出演、松田弘之:笛、佐藤健作:和太鼓

セルリアンタワー能楽堂の「伝統と創造シリーズ」のVol.5は、能『石橋』に触発された森山開次が『Shakkyou』を振付け、踊った。
2011年に能楽師津村禮次郎の協力を得て新作の準備していた森山開次は、震災に遭遇し演目の変更を余儀なくされた。そしてこの『Shakkyou』の創作を決意。さらに空海に関するTV番組にかかわり、番組の中で鎮魂のダンスを踊り、それを収斂した『Shakkyou』を同年8月に佐渡薪能で披露した。その後ロシアのモスクワ、サンクトペテルブルクなどで踊り好評を博したという。

tokyo1303f_02.jpg 撮影/白井亮

まずは半能として、浄土に至るという橋の向こうから、文殊菩薩の使いである獅子が登場する場面から能『石橋』(獅子:津村禮次郎、寂昭法師:舘田善博)が舞われた。
続いて森山開次によるダンス『Shakkyou』。
音楽は和太鼓と能管のみで、まず能管と和太鼓の奏者が登場する。大太鼓は三尺一寸の蒼鷹(そうよう)という名のものがセットされていた。打つ前のパフォーマンスがなかなか良かったが、さらに素晴らしかったのは、その曲。和太鼓の微妙に変化する響きにより、石橋にたどり着いた僧の心理と佇まいを見事に象徴して表している。この世界では当たり前のことかも知れないが、このように雄弁なというか説得力のある象徴的表現が、シンプルな和太鼓によって可能とは驚かされた。僧を演じている津村禮次郎が、あたかも和太鼓の音に導かれているかのように感じられるのだ。そして能管はドラマの起伏をものの見事に表して余すところがない。僧はふたつの楽器に、まるで糸で操られてでもいるかのようだった。
音楽に聴き惚れ僧の動きに見とれていると、いつの間にか橋懸かりに姿を表していた森山開次の獅子が踊りだすのである。浄土へと渡る限りなく細く渡ることが困難な橋。その前に佇む修行僧の想念の中で、獅子は華麗に舞い、紅白の見事に生けられた牡丹や、大きな和太鼓の上や後ろに出没し、聖なる獣性を表わす。森山は豊かな想像力と独特の美意識のよって動きを構成した。神秘的で神々しい浄土のイメージが観客の空想の中に浮かび上がるのが感じられたような舞台だった。
(2013年2月9日 セルリアンタワー能楽堂)

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撮影/白井亮(すべて)