ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2013.01.10]
♪バレエ昔も今も♪BALLET OLD AND NEW♪
かつて『くるみ割り人形』に登場するネズミの王様は7つの頭を持っていた。7つの頭が付いているネズミというイメージは、かなり強烈なインパクトをもつ。しかし、近年では子供向き・家族向きのバレエということからか、このグロテスクなイメージ(しかしとても童話的だ)は次第に薄れ、忘れられ、ほとんど登場しなくなった。辛うじてマコーレ・カルキンが主演したニューヨーク・シテイ・バレエのバレエ映画には、確か登場していたと思う。さすがバランシンだ、と感心した記憶がある。
私は、マリインスキー劇場の売店の片隅でちょっと寂し気に拗ねていた7つの頭を持つネズミの王様人形を見つけて即購入し、大切に保持している。
アレクセイ・ラトマンスキーが振付けたABTの『くるみ割り人形』には、7つの頭を持つネズミの王様が復活していると聞いた。調べてみるとWEBサイトにはそのぬり絵まであった。私はとっても嬉しかった。
ラトマンスキー、ありがとう。2014年の来日、心からお待ちしております。

小野絢子と福岡雄大がアシュトン版『シンデレラ』を闊達に踊った

新国立劇場バレエ団
『シンデレラ』フレデリック・アシュトン:振付

新国立劇場バレエ団の2012年クリスマス・年末公演はアシュトン版の『シンデレラ』だった。このところクリスマス・年末公演はこの『シンデレラ』と牧阿佐美版の『くるみ割り人形』とが交互に上演されている。

tokyo1301a_01.jpg 撮影/鹿摩隆司

プロコフィエフの『シンデレラ』は、貧乏で虐げられているが純真な心の持ち主のシンデレラと王子が、仙女や四季の精の協力により結ばれる、というロマティックなストーリーと、義理の姉妹や道化、ナポレオンやウエリントンなどのコミカルな戯画化された世界とを、バランス良く物語展開させなければならない。アシュトン版は、第3幕の王子が各国を巡ってシンデレラを探す旅をする場面をカットしたことで、バランスが良くなっていると思う。またこのバレエによく登場する義理の母親が登場しないことも成功の一因だろう。義母が加わるるとどうしても姦しくなってシンデレラの存在感を消してしまいがちだ。さすがにアシュトンは洗練された舞台を創っている。

私は小野絢子のシンデレラと福岡雄大の王子で観た。小野絢子は2010年に既にこのタイトルロールを踊っているが、アシュトンの良く考え抜かれた振りと無駄のない物語構成が、彼女の踊りのテンポとフィーリングによりマッチしていて、まるでオリジナルキャストでもあるかのように活き活きと踊っていた。特に第2幕の長いヴァリエーションは、軽やかで素速くスピード感かあり、力強い活力と若々しさが感じられた。そのゆるぎなさは、義理の姉たちに蔑まれ疎まれても、決して怯まない精神性からうまれたもので、母から受けた深い愛に育まれたものだろう、と思わせる説得力があった。そして幸せの絶頂に、魔法が解ける12時の鐘が鳴るという、いわば愛と死のスリリングなドラマが繰り広げられた。
福岡雄大の王子は相変わらずダイナミックなダンスで頼もしい。だだ、少々力ずくで踊っているかのように見えてしまうところがある。充分、細やかさへの配慮も行き届いていると思うのだが、力強さが際立つだけにこうした作品では見せ場を作るのが難しかったかも知れない。大きな可能性を秘めたダンサーだけにこれからもっと力を発揮してくれるはずだ。
(2012年12月21日 新国立劇場 オペラパレス)

tokyo1301a_02.jpg 撮影/鹿摩隆司 tokyo1301a_03.jpg 撮影/鹿摩隆司
tokyo1301a_04.jpg 撮影/鹿摩隆司