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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2012.11.12]

ハンガリー舞曲をモダンな味付け踊った、オーケストラとバレエの共演

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団&東京シティ・バレエ団
〈オーケストラwithバレエ〉『ハンガリー舞曲』飯守泰次郎:指揮、石井清子:演出・振付

〈オーケストラwithバレエ〉は、バレエ公演では通常、オーケストラ・ピットで演奏するオーケストラがダンサーと同じ舞台の上で共演するという、ティアラこうとうならではの企画。共演したのは、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団と東京シティ・バレエ団。両者が東京都江東区と芸術提携を結んでいるからこそ、恒例行事として定着できたのだろう。
今年で18回目という。ただ、公演ではオーケストラに比重が置かれており、第1部は演奏のみの〈フレッシュ名曲コンサート〉で、第2部が〈オーケストラwithバレエ〉である。指揮は飯守泰次郎、振付は石井清子と、ベテラン同士である。

tokyo1211d01.jpg 撮影/鹿摩隆司

第1部でグリンカの歌劇『ルスランとリュドミラ』序曲に続いたのは、ボロディンの歌劇『イーゴリ公』より“だったん人の踊り”。舞踊を伴うシーンだが、東京シティ・フィルの躍動感溢れるダイナミックな演奏は、宴が高揚していく情景を彷彿させた。舞台の前面はバレエ用に空け、後方で演奏したため音響上のハンデはあるが、それでも音楽の喚起力の凄さ感じさせた。アルチュニアンの「トランペット協奏曲 変イ長調」では、トランペットの新鋭、多田将太郎が、華やかさの中にしっとりと抒情を漂わせてソロを奏でた。

第2部はブラームス「ハンガリー舞曲集」より。
ブラームスがハンガリーやロマの音楽から着想した舞曲の管弦楽版の中の8曲に振付けたもので、2003年の〈ラフィネ・バレエコンサート〉で初演されたという。ハンガリーの民族衣裳とティアラで着飾り、ブーツを履いた坂本麻実は“伝統”の象徴のようで、各曲をつなぐように登場して踊ったが、民族色を際立たせた振りではなかった。他のダンサーたちは“現代”を表すようなプレーンなタイツ姿で、軽快なステップやしなやかなジャンプで若さをはじけさせた。ただ、アンサンブルに多少ズレや乱れがあったのが惜しまれる。
曲には〈どっちにする?〉〈情熱〉〈心にしみる悲しみ〉などと表題が付けられていたが、1曲が短いこともあり、総じてさらりとした感触を受けた。今回のプログラムは、「ハンガリー舞曲」に合うよう、前半も民族色豊かな曲を並べていた。アレクサンドル・アルチュニアンの曲はトランペット奏者には人気の作品でも、一般にはあまり馴染みがなさそうだ。今年3月に亡くなったアルチュニアンはアルメニアの作曲家・ピアニストで、この協奏曲からもうかがえるように、アルメニアの民族音楽の特色を採り入れた作品で評価を得た、という簡単な解説でも良いから、プログラムに載せて欲しかった。
〈オーケストラwithバレエ〉が、音楽ファンにはバレエに、バレエファンには音楽に親しんでもらい、両方の関心を深めてもらうことを意図しているのなら、そうした配慮も必要と思う。
(2012年10月14日 ティアラこうとう大ホール)

tokyo1211d02.jpg 撮影/鹿摩隆司 tokyo1211d07.jpg 撮影/鹿摩隆司
tokyo1211d03.jpg 撮影/鹿摩隆司 tokyo1211d04.jpg 撮影/鹿摩隆司
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tokyo1211d08.jpg 撮影/鹿摩隆司