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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2012.06.11]

さらに若々しく新しい役創りに邁進する森下洋子主演の『コッペリア』

松山バレエ団
構成・演出・台本・振付:清水哲太郎『コッペリア』
『コッペリア』または『Festival de la Renaissance』〜復興祭〜

松山バレエ団が新た構成・振付けた『コッペリア』または『Festival de la Renaissance』〜復興祭〜(全3幕8場)を上演した。松山バレエ団の『コッペリア』上演は、じつに16年ぶりになるという。
今回の作品は、東日本大震災の体験を踏まえて構想されたと思われる。クラシック・バレエの『コッペリア』の世界が、大震災を受けた街の復興へむけたドラマティックなエネルギーと融合していく物語で、クラシック・バレエの『コッペリア』の物語世界が持つ、生命の歓び、再生への祈り、といった要素を再構成して新たなドラマを創る試みといえるだろう。

時はフランス革命が起きる前年の1788年。地中海に囲まれた古風な架空の街が舞台となっている。
この街は1年数ヶ月前に巨大な震災を受け、生き残った人々が復興に向けて闘っている。優れた学者でこの街の有力者、コッペリウス・スピノザは、復興に向けての指導者として期待されている。しかし彼は、最愛の娘にして若きリーダーだったコッペリアを、大震災の犠牲者として失い、悲嘆にくれた日々を送っている。
コッペリアを姉のように慕っていたスワニルダ、コッペリウス・スピノザに可愛がられ薫陶を受けて成長したフランツは、復興への動きを見せない学者にして有力者の態度が不思議でならない。そして街は、「Festival de la Renaissance〜復興祭〜」へ向けて動き始めている・・・・といった展開でバレエは進行していく。
ただ、かなり複雑な物語構成となっているため、少々分かりにくい面もある。舞台で演じられている歓びや悲しみを、ストレートに受けとめ理解するための準備が整えにく部分があったと思われる。
しかし、大多数のコール・ド・バレエを構成して動かす力は、このバレエ団の優れた特徴となっている。今回はいっそう多種多様に展開していたように思われる。

スワニルダは森下洋子、フランツは鈴木正彦が踊り、コッペリウス・スピノザは鄭一鳴、コッペリアは塩沢美香が踊った。舞踊歴60年を数えてもさらに新しい役創りに励む、森下洋子にはただただ頭が下がる想いだ。この作品でも衰えを知らない若々しい表情で、命への愛惜を踊った。
(2012年5月3日 Bunkamura オーチャードホール)

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