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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2012.05.10]

谷桃子バレエ団、若手育成のための新シリーズ第1弾『白鳥の湖』

マリウス・プティパ、レフ・イワノフ原振付、谷桃子:総監督、芸術監督:望月則彦『白鳥の湖』
谷桃子バレ団

谷桃子は1948年、東京バレエ団第4回東京公演で小牧正英振付『白鳥の湖』のオデット、オディールを踊った。そして1955年には、パリ留学帰国後の最初の谷桃子バレエ団全幕公演としてとして、大阪と東京で『白鳥の湖』を踊っている。さらに57年には『ジゼル』の全幕を踊り、谷桃子バレエ団はこの2作品の全幕の初演を自分たちの力で成し遂げることによって、カンパニーの芸術的基礎を築いたといえるだろう。
『白鳥の湖』を若手育成のための新シリーズの第1弾に選んだのは、単にもっとも著名な作品だからというだけはない、そうしたカンパニーの伝統に沿った意義もあるのだと思われる。

tokyo1205c01.jpg 撮影:スタッフ・テス 飯田耕治/中岡良敬

初日にはオデット/オディールを佐藤麻利香、王子を酒井大が踊り、二日目はオデットを穴井宏実、オディールを田中絵美、王子を檜山和久が踊った。私は二日目を観た。
演出は道化が狂言回し的に活躍するオーソドックスなもの。第3幕では、王子は自身の愛の儚さを表すかのように、湖畔で出会ったオデットの羽を胸に忍ばせて登場する。演出的には少々、羽にこだわり過ぎではないかとも思わせるセンチメンタル印象があったが、檜山は素直な踊りでむしろ爽やかな余韻を舞台に漂わせた。檜山は慶応義塾大学美術史学科を卒業し、昨年入団、日本バレエ協会公演『La Vie de Paquita』では主演している。
谷桃子バレエ団研究所出身で昨年、日原永美子振付の『オディールの涙』のソリストを踊っている穴井のオデットは、少女の初々しさに悲しみを漂わせる抒情性が感じられる感じの良い踊りだった。ロゼラ・ハイタワーのスクールやオーストラリア・バレエ団で学んだ経験のある田中のオディールは、臆すること無く堂々としていて気持ちが良かった。3人とも初役でキャリア的にも大きな差がないことが、却って若々しいバランス保ち素敵な舞台を創ったのかもしれない。この3人の主役には、さらに深い感情の表現を身につけるように心がけて欲しい。
指揮者もカンパニーとって初めてとなる川合尚市に依頼し、それにともないオーケストラは尚美学園大学管弦楽団となった。また舞台監督も山田亜由美、照明は森島都絵と新たなスタッフが起用されている。「真の総合芸術としての情熱のうねりを感じさせる舞台」を創ろうという試みだという。
ダンサーはアーティストとして、創作的な発想を伸ばすことももちろん必要だが、先人の仕事を敬意をもって体験することは、最も重要なことと言っても過言ではない。今回の経験をぜひとも、今後の活動の糧にしてはばたいてほしいと思う。
(2012年4月15日 新国立劇場 中劇場)

tokyo1205c02.jpg 撮影:スタッフ・テス 飯田耕治/中岡良敬 tokyo1205c03.jpg 撮影:スタッフ・テス 飯田耕治/中岡良敬