ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2012.04.10]

激しい愛の浮き沈みを女性的な美しいイメージで描いたキミホ振付『マノン』

キミホ・ハルバート演出・振付『マノン』
UNIT KIMIHO

キミホ・ハルバートが自身が率いるダンスグループ、ユニット・キミホの第3回目の公演のために『マノン』を演出・振付けた。
アヴェ・プレヴォーの傑作小説『マノン・レスコー』は、ジュール・マスネやプッチーニのオペラ、ジョルジュ・クルーゾー監督の映画、ケネス・マクミラン振付のバレエなどになっていることは良く知られている。
キミホはこの企画を数年前から温めていたが、「バレエともオペラとも違う、小説に近づきながら、キミホバージョンの『MANON』を創作する」という意識をもって振付けにあたった、という。『マノン・レスコー』は著者アヴェ・プレヴォーの自伝的な色彩の濃い小説、と言われている。

キミホは自身でマノンに扮し、デ・グリューには佐藤洋介、グリューの友人タイス/ティベルグに森田真希、GMに芝崎健太、マリッサ(捕われた娼婦)宮内真理子、レスコー穴井豪、アイリス(レスコーの恋人)菊池いつか、レノンクール(語り手)上野天志、というキャスト。音楽はノイズや現実音まで幅広い音源を採り入れたオリジナル曲を小瀬村晶が作曲している。舞台全体を薄い半透明の紗幕で囲み、アールのついた大きな覆いを二つ、テーブルやソファーや椅子など最低限の備品を備え、全体に白い優しい雰囲気を感じさせる装置だった。
第1幕は、おおよそ小説の展開どうりのシーンで物語が展開する。マノンは現実世界の中でデ・グリューとの愛に目覚めていくが、一方で天性の女性としての自由な心もまた姿を現し、様々な軋轢も重ねていく。佐藤洋介のデ・グリューはマノンとの愛に全存在を賭けている姿を力のこもった踊りと演技で熱演した。第2幕は、現実世界から追放されたマノンとデ・グリューが体験する幻想的な場面構成となる。クライマックスのラストシーンでは、ふたりのパ・ド・ドゥが踊られて、マノンはデ・グリューの腕の中で息絶える。すると大量のの白い砂が流れ落ちて、デ・グリューの傍らに横たわったマノンの身体を埋め尽くしていく。そしてそこにはいつの間にか、語り手のレノンクールがマノンの魂を宿して立ち尽くしていた・・・というエンディングだった。
キミホらしい女性的な優しい感性で、浮き沈みの激しい愛の物語から美しいイメージを際立たせて、品良くまとめあげた舞台だった。”大所帯”のスタッフ・キャストをリードして幕物をしっかりと制作した力量は大したものだ。また、原作小説への深い共感に基づいて舞踊化しているところも、たいへん好感のもてる作品だった。
(2012年3月11日 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール)

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撮影/増田雄介