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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2012.02.10]

森下洋子の蓄積されたキャリアが生きた舞台表現の輝き、新『白鳥の湖』

清水哲太郎 台本・演出・振付 新『白鳥の湖』
松山バレエ団

昨年、新『白毛女』を上演した第13回訪中公演を成功のうちに終えた松山バレエ団が、新『白鳥の湖』のお正月公演を行った。この公演は毎年、恒例となっているものだった。ところは今年は、会場に着いて驚いた。オデット/オディールを踊るのは森下洋子だったが、ジークフリード役は清水哲太郎ではなく、鈴木正彦に変更されていた。おそらく、後進の育成といったことなどについて慮ってのことだろうと思われる。私も森下洋子、清水哲太郎以外が主演する松山バレエ団の全幕バレエを観るのは初めてのこととなる。

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ジークフリードを踊った鈴木正彦は、最初はさすがに緊張気味だった。しかし、森下洋子の決して踊り急がない、明快で落ち着いた舞台マナーにも助けられたと思われるが、たちまち平常心を取り戻したようにしっかりと踊った。後半はむしろ頼もしささえ感じさせる舞台だった。
森下洋子のオデット/オディールやはり見事なもの。形どうりに動きを連続してみせるのではなく、パのすべてがきちんと自分自身の内面で咀嚼されて、観客のこころへ訴えかける表現へと昇華されて物語を語っている。もちろんそれは口で言うほど単純で簡単なことではない。バレエのキャリアがしっかりと蓄積され、日々の訓練の成果を生かして創った舞台表現が輝いているのだ。

王位を継承するというジークフリードの現実とそれを簒奪するというロットバルトの幻想が闘って、様々なドラマの局面を現す。もちろん融合することは叶わない。そして、ロットバルトの陰謀が暴かれてドラマはひとつの終局を迎える。演出家は物語の流れの中に慎重に伏線をめぐらして、奇跡的な愛の力の賛歌を描いている。ただそうした配慮の行き届いた物語のわりには、終盤がちょっと単調に感じられてしまったのは残念だった。
鈴木正彦は破綻なく踊ったが、松山バレエ団の舞台では清水哲太郎のイメージがたいへんに強く、どうしても踊る姿が似通って見えてしまうのは、いたしかたないところだろう。今後のさらなる活躍に大いに期待したい。
(2012年1月27日 NHKホール)

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