ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.10.11]

時代を超えた鮮烈な愛をアピールした『ロミオとジュリエット』

ジェラール・プレスギュルヴィック 作、小池修一郎 潤色・演出、TETSUHARU 振付『ロミオとジュリエット』
TBS/ホリプロ/梅田芸術劇場

鬼神も涙するシェイクスピアの愛の悲劇『ロミオとジュリエット』は、様々のジャンルで様々な演出により、舞台や映画に創られてきた。バレエでも舞踊史上に名を残す名だたる振付家たちが腕によりをかけて舞台に上げてきた。その中でも今日では、シェイクスピアの故国、英国ロイヤル・バレエ団にケネス・マクミランが振付けたヴァージョンが最も著名で、世界中の多くのバレエ団がレパートリーに採り入れている。

tokyo1110e03.jpg 撮影/宮川舞子

今回上演されたのは、2001年に初演されて以来、20数カ国をツアーして大成功を収めているフランス人のジェラール・プレスギュルヴィックによるミュージカルを小池修一郎が潤色・演出した日本オリジナルヴァージョン。
ジュリエットの人間的成長に焦点をあてたマクミラン版の演出とは異なり、キャピュレット家とモンタギュー家の激しい対立とその和解にポイントを絞って描いている。特にキャピュレット家は、夫人が密かに跡継ぎとなるティボルトと関係があり、当のティボルトは姪のジュリエットを密かに愛している。さらにはジュリエットにはキャピュレット卿とは別の実の父がいるらしい…‥という惨憺たる実状がドラマが展開するに連れて次第に明らかになっていく。これはつまり、若き日のキャピュレット夫人が実家の経済的状況を救うために、愛なき結婚をしてしまった悲しい結末なのだ。そうした愛無き結婚に絶望しているにもかかわらずキャピュレット卿は、わが家の借金を清算するために、ジュリエットをヴェローナ一番の金持ちだがいけずな男、パリス伯爵との結婚を強引に奨めている。背に腹は代えられないというわけだ。
そして愛に対して投げやりにしか対応できないキャピュレット夫人やただ単に実利的な幸せを説く乳母は、ジュリエットの真情を理解することができない。ルネッサンス前夜の絶望的なデカダンスが、キャピュレット家の内側に深く浸透している様子が見事に表現されている。それはまたこの作品の背景とされた、腐食し破壊されていく世界の中で再生を目指すヴェローナの町のイメージとも呼応している。

tokyo1110e04.jpg 撮影/宮川舞子

幕開きから凄絶な衣裳の両家の人々( "R&J DANCERS"として30名が二組に別れて踊る)が、ロック調の歌と音楽にのって跳梁し、激しい争いを繰り広げる。マキューシオもベンヴォーリオもこの衣装でキャピュレット家の仮面舞踏会に乗り込んでは、いくら仮面を着けても一目瞭然ではないか、と無用の気持ちが動いた。
そしてこの『ロミオとジュリエット』の特徴でもある「死」を表すダンサーが、両家が争いを繰り返す冒頭から、登場人物たちの運命を見通して深く静かに踊り、ドラマの終盤にまで姿を見せる。シースルーの黒い衣裳を着けた大貫勇輔が長い手足を駆使して、妖しい存在感を放って踊った。
振付はTETSUHARUだが、ヒップホップやシアターダンス、ジャズダンス といったジャンルにはこだわらず、過激な衣裳を着けたダンサーたちをコントロールしてパワフルな表現を創っている。
ロミオに扮した山崎育三郎はもちろん、オーデションを勝ち抜いたフランク莉奈のジュリエットも魅力を全開して健闘していた。キャピュレット夫人役の涼風真世とべンヴォーリオ役の浦井健治が印象に残る演技をみせた。
(2011年9月14日 赤坂ACTシアター)

tokyo1110e05.jpg 撮影/宮川舞子 tokyo1110e01.jpg 撮影/宮川舞子 tokyo1110e02.jpg 撮影/宮川舞子