ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.10.11]

鍵田真由美が圧巻の踊りをみせた、アルテ イ ソレラの「愛こそすべて」

佐藤浩希 演出・振付「愛こそすべて」
アルテ イ ソレラ ARTE Y SOLERA
tokyo1110d01.jpg 撮影:川島浩之

鍵田真由美と佐藤浩希が主宰するARTE Y SOLERAの「愛こそすべて」を観た。華麗なるフラメンコ・レヴューと副題が付されているように、スペイン歌謡を華やかに踊る公演だ。
ギタリストでもあるホセ・ガルべス、フェルナンド・ソト、アナ・デ・ロス・レジェスの三人のカンタオール、カンタオーラを招いて、スペイン歌謡12曲を選んでヴァラエティに富んだダンスのステージを構成した。
アルテ イ ソレラの15名のダンサー全員が踊る「Un Clavel」から、鍵田真由美がソロでみせる「Señora - Se nos rompió el amor」まで、なかなか充実した構成だった。しかしやはり、鍵田真由美の踊りが素晴らしかった。特にこうした物語の展開によらない、タブラウで踊られるようなステージでは際立って輝いてみえる。頭のてっぺんから足指の先までぴりりと神経が行き届いて細やかに動き、じつに魅力的な濃密な表現を作る。柔軟な身体が描くラインと音楽を巧みに調和させて、無駄な動きのない安定感のある踊りだった。ラストを飾ったソロのナンバーではその魅力を存分に堪能させてもらった。

踊りにも参加するゲストアーティストのソトの長い指は、独立した生き物のように細かく微妙に動いてじつにチャーミングな雰囲気を醸す。スキンヘッドに日本列島の本州部分だけを描いたような揉み上げが印象的で、歌はもちろん心に沁み入るように歌って情感が揺さぶられるように感じられた。
構成・演出・振付を担当した佐藤浩希は、そつなく優れた身体を活かした力強い踊りだった。ステージの上での存在感にも次第に磨きがかかってきたように思う。スペイン歌謡を踊るわけだから、それぞれの作品はあまり長くはない。その点、男性のメインダンサーの踊りとしては、やや物足りなさが残った。演出や振付も負担だと思われるが、フラメンコあるいはスペイン舞踊のようなプリミティブな輝きが魅力を放つ踊りは、やはり圧倒的なボリュームがあったほうがいいのではないか、とも思う。かつて観てきた若きバイラオールは、舞台上で倒れてしまうのではないか、と心配になるほど踊っていた、と記憶しているのだがどうなのだろうか。
若手のフラメンコ・アーティストのプロデュースや、伝統的なフラメンコの研究など意識の高い活動を行っている佐藤浩希の今後の展開に期待したい。
(2011年9月3日 世田谷パブリックシアター)

tokyo1110d02.jpg 撮影:川島浩之 tokyo1110d03.jpg 撮影:川島浩之