ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.09.12]

踊る楽しさと演じる喜びが巧みにミックスされた『卒業舞踏会』

キミホ・ハルバート振付『Tema con Variazioni』 南條幸子振付『ランナー』 新井雅子振付『妖精たちの森』
ダヴィット・リシーン原振付、デヴィット・ロング改訂振付『卒業舞踏会』
バレエ協会「全国合同バレエの夕べ」
tokyo1109e01.jpg 『Tema con Variazioni』撮影/スタッフ・テス 飯田耕治

沖縄から北海道までバレエ協会のすべての会員が参加できる「全国合同バレエの夕べ」は、今回で53回目を迎えた。8月4日と6日に開催され9作品が上演された。私は6日の東京地区、沖縄支部、関東支部、そして本部出品作品を観た。
まず、東京地区はキミホ・ハルバートがチャイコフスキーの曲に振付けた『Tema con Variazioni(テーマ・コン・ヴァリアツィオーニ)』。西田佑子と菅野英男のプリンシパルを中心に、菊池いつか、森田真希、古川和則、輪島拓也ほか28名のダンサーが踊った。
重層する純白のフレームを作り、きっちりとした古典的なフォーメーションを展開し、曲想を尊重して格調高く仕上げられていて感心した。ムーヴメントも衣裳もシンプルで無駄がなく整えられていて、フォーメーションもくっきりと隙がなかったせいか、いつものキミホ作品よりはやや硬質な印象をうけた。こうした作品にも優れた振付の手腕を発揮するのは承知しているが、やはり、彼女自身のテーマを展開するダンスも観たくなる。

続いて沖縄支部の南条幸子振付の『ランナー』。音楽はギリシャ人作曲家で、映画『炎のランナー』や『ブレードランナー』の音楽で知られるヴァンゲリス・パパサナスィウを使っている。2003年の初演作品だそうだ。
黒い総タイツを着けた6人の女性ダンサーが、四季の移ろいの中で生命のエネルギーを発露しながら力強く成長していく様を、目標に向かって走るランナーのイメージに重ねて描いている。天から縄梯子を垂らしたようなセットに照明を凝らして、独特のヴィジュアルを作った。6人が連動する動きもおもしろかったが、何より率直で謙虚に自然と対峙している姿勢が素晴らしい。今後も沖縄から生まれる創作のエネルギーを活かしたバレエに期待したい。

関東支部による『妖精たちの森』はメンデルスゾーンの曲を使って新井雅子が振付けた。タイテーニア(大滝よう)オーベロン(平野玲)とパック(石井沙絵)、そして妖精たちが、森の広場で繰り広げる幻想的な夜のシーンを描いたもの。パックの赤い花とそれぞれの妖精たちの光る手が効果的に舞台を彩った。

tokyo1109e08.jpg 『卒業舞踏会』撮影/スタッフ・テス 飯田耕治

最後は本部出品のスペシャル・プログラム『卒業舞踏会』。ダヴィット・リシーンの原振付をデヴィッド・ロングが改訂している。音楽はヨハン・シュトラウス他の曲をアンタル・ドラティが編曲したもの。
女学院長は樫野隆幸、老将軍が堀登が演じ、ラ・シルフィードは西田佑子とスコットランド人役の岡田展佳が踊った。ほかに鼓手に高橋真之、下級生のソロに宮崎たま子、岸川英里などが出演している。
バレエ協会としてはしばしば上演しているだけに手慣れた舞台で楽しかった。女学院の卒業舞踏会に参加する女子学生と招かれた士官候補生たちの、期待と好奇心が満ちている大広間で、女学院長と老将軍の掛け合い、即興ダンスや鼓手のパフォーマンスやフェッテ競争などお馴染みのデヴェルティスマンが次々と踊られる。そのひとつ、ラ・シルフィードを踊った西田佑子が良かった。登場人物全員の視線を一身に集めて、空気の軽さをふわりと踊り、このコメディ・バレエの要所をしっかりと決めた。ダンスを踊る楽しさと演じる喜びがほどよくミックスされた心が明るくなる舞台だった。
(2011年8月6日 新国立劇場 オペラパレス)

tokyo1109e02.jpg 『Tema con Variazioni』撮影/スタッフ・テス 飯田耕治 tokyo1109e07.jpg 『卒業舞踏会』撮影/スタッフ・テス 飯田耕治
tokyo1109e03.jpg 『ランナー』撮影/スタッフ・テス 飯田耕治 tokyo1109e04.jpg 『ランナー』撮影/スタッフ・テス 飯田耕治
tokyo1109e05.jpg 『妖精たちの森』撮影/スタッフ・テス 飯田耕治 tokyo1109e06.jpg 『妖精たちの森』撮影/スタッフ・テス 飯田耕治