ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.07.11]

山名たみえのショパンの鼓動がリズムを刻んだダンス

山名たみえダンスフレグランス2011
『Flowing Water』『透明な磁界』『La nostalgie 〜ショパンの心臓』
ダンスカンパニーDeux
tokyo1107h04.jpg

冒頭の『Flowing Water』は、2009年にオランダの舞踊家・映像作家のアイリーン・スタンドリーを、オランダから自力招聘して初演した『Joing Water』を抜粋改訂した作品。
間遠うな水滴の滴る響きから始まって、速い流れ豊かなたゆとい、そして生命を育む豊穣の大海までが、現実音と表情豊かな映像を背景に展開してゆく。14名の女性ダンサーが舟形や波形など水を巡る様々の「形」を織り込んだダンスを踊る。素直に自然と向き合った静謐感のある情景が描かれた。
次に上演された『透明な磁界』は、男女4人ダンサーたちの運動が発展して共通の関係が生まれアンサンブルを成すダンス。舞台には色分けされた4カ所のステーションが配され、それぞれのダンサーがセンターに現れて動きを作る。バラバラだったり2人になったり3人になったり組み合わせが変化し、動きがシンクロしたり、また離散したり。混沌とした運動から発せられたエネルギーが舞台に満ちた。

tokyo1107h05.jpg

『La nostalgie〜ショパンの心臓』は、舞台にグランド・ピアノと黒いハットをかぶったピアニスト。そしてベージュのワンピースを着けた山名たみえ。
ゆっくりと歩き始めるオープニングから、グランド・ピアノに置かれていた真っ赤な布を手にとって踊り始める。
パリに客死したショパンは、心臓を故国ポーランドに埋めるように言い遺したという。山名は虚空に漂うショパンの想いをソロで踊る。ショパンの心臓を表す真っ赤な布は折り畳まれたジャケットだった。山名はそのジャケットに前から両袖に腕を通して、あたかもショパンと抱き合うかのような格好になる。また時折、ジャケットは山名のリードに逆らうかのごとく勝手に動き出し、ショパンの仮想の身体は自身のピアノの音に戯れる蝶のように踊り、虚空を放浪う魂の息遣いを舞台上にみせた。
シンプルで率直な三つの表情をもったフレグランスが踊られたが、やはりショパンの鼓動がリズムを刻んだダンスが印象的だった。
(2011年6月4日 新国立劇場 小劇場)

tokyo1107h01.jpg tokyo1107h02.jpg
tokyo1107h03.jpg tokyo1107h06.jpg

撮影:池上直哉
※画像をクリックすると、大きな写真をご覧いただけます。