ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.07.11]

宇宙から飛来する光とともに踊った平山素子の『月食のあと』

平山素子ソロプロジェクト『After the lunar eclipse/月食のあと』リ・クリエイション
愛知芸術文化センター
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平山素子のソロプロジェクトは、「自身が<舞踊>そのものを体現する真のダンサーになりたいと強く願うきっかけとなった作品」の『月食のあと』(2009年愛知芸術劇場)のリ・クリエイション。「ソレハ、イツモユルヤカニ浸食シ壊シテイク」という言葉が付されたダンスだ。
開幕前に客電がおち開演がしばし遅れたが、そのことによって私のような怠慢な観客は、この作品がいかに先端的な技術を使ったものであるかということを知らされた。

舞台の背景と天に276個のLEDが4次元に配置されていて、「宇宙の彼方から飛来する宇宙線(宇宙放射線)の様々なエネルギー値をシンチレーターで検知し、リアルタイムで光に変換している」という。
舞台上の光の点滅は、通常行われているように人工的にプログラムされたものではない。地球上の原理とあるいは演出家が創りだす劇空間の時間とは無縁の、宇宙の法則に従ったエネルギーがこの舞台上にそのまま現れている。確かに舞台の光は、星空を見上げた時に感じるゆらぎをみせて美しかった。しかしまた、私たちの身体には1秒間に200個以上の宇宙線が貫通しているそうだ。するとそのゆらぎは私の身体を貫いている光で構成されていることになり、なにか不思議な身体感覚を意識させられたようにも感じた。

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舞台空間と平山の身体で輝くライトアートは、国際宇宙ステーションで芸術実験などを行っている筑波大学教授の逢坂卓郎が担当している。衣裳は映画、ダンス、ミュージシャンなどの衣裳も手掛けるスズキタカユキ。いわばアートとサイエンスのエキスパートによるコラボレーションである。
その光のゆらぎの中で平山素子のソロは始まった。月食による月の光の消滅と復活の中に浮かび上がる身体。月が陰っていた時は存在しなかった物体が身体としての命を得る。「私は蝶になった夢を見ていた人間なのだろうか。それとも人間になった夢を見ている蝶なのだろうか」という荘子の言葉を引いて、平山はこの美しいソロプロジェクトを提示している。その身体は、異なった宇宙から飛来してゆらぐ光に曝されて、地上に不思議な詩を詠ったのである。
(2011年5月27日 世田谷パブリックシアター)

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撮影:池上直哉
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