ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.07.11]

品格のある演出と若い日高有梨と落ち着いた菊地研の『白鳥の湖』

三谷恭三:演出・振付『白鳥の湖』
牧阿佐美バレヱ団
tokyo1107c01.jpg

牧阿佐美バレヱ団の『白鳥の湖』は、1980年に初演したテリー・ウエストモーランド版を再演してきたが、2009年に美術も新たにして三谷恭三が改訂振付を行っている。
今回は、オデット、オディールを青山季可と日高有梨、ジークフリードを京當侑一籠と菊地研というダブルキャスト。私は日高有梨のオデット、オディール・デビュー公演を観た。

全体に古風な品格のある演出に、若々しい日高の身体が堂々とおおらかなラインを描いて見応えのある舞台だった。
演出は道化は使わず、ロットバルトが白鳥を支配している現実を巧みに表した。『白鳥の湖』の見所の一つであるコール・ド・バレエのフォーメーションもシンメトリーを基本とした古典的な規律を守り、なかなかシックな美を描いた。特に2幕の王子の友人たちと囚われの白鳥たちが出会うシーンのヴィジュアルは、まるで泰西名画のように美しく、一枚の写真としてフレームに入れて飾っておきたいと思わせるものだった。
ラストシーンも裏切ったジークフリードを深い愛で許して死を選んだオデットは、その愛の力でロットバルトに打ち勝ったジークフリードと天国で結ばれる。明快な表現で好印象を残すエンディングだった。

日高有梨は、おめずおくせず長丁場を踊りきったのは見事だった。ステップにはスピード感があり、身体のバランスも良かった。初役とは思えない落ち着いた堂々とした演舞だが、欲をいえば白鳥と黒鳥のコントラストをもっとくっきりと観客にアピールしてほしい。橘バレエ学校出身で3歳からバレエを始めたそうだが、豊かな踊りのエネルギーが身体に宿っているのが感じられる。まだまだ大きな可能性を秘めているし、スターになる資質にも恵まれていると思う。
2009年以来、ジークフリードに扮するのは2回目という菊地研は安定感があり、端正なしっかりした踊りで、表現も的確だった。観客席から観ていると、もっと役に没入していることを表し、菊地の特徴とも言えるノーブルな面をさらに開発していく積極性を舞台上で露にしてもいいのではないだろうか、とも思う。今回の舞台ではダンサーとしてさらに飛躍する予感があった。
3幕のパ・ド・カトルが清新な踊りで活気に溢れていて良かった。大きな白鳥は吉岡まな美、笠井裕子、茂田絵美子、久保茉莉恵という主役級が揃う豪華版だった。全編にわたって若い男性ダンサーたちの溌剌とした踊りが印象に残る、なかなかレベルの高い『白鳥の湖』だった。
(2011年6月12日 ゆうぽうとホール)

撮影:鹿摩隆司
※画像をクリックすると、大きな写真をご覧いただけます。