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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2011.07.11]

小出領子の入念な役作りが光った『白鳥の湖』

Choreography by Marius Petipa & Lev Ivanov, revised by Alexander Gorsky “Swan Lake”: The Tokyo Ballet
マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ振付、アレクサンドル・ゴールスキー改訂振付『白鳥の湖』
東京バレエ団
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東京バレエ団による2年振りの『白鳥の湖』。東京公演では、上野水香&ロベルト・ボッレと、小出領子&後藤晴雄のダブルキャストが組まれていたが、ボッレが福島の原発事故の影響などを危惧して来日を中止したため、マシュー・ゴールディングに代わった。こうした事態がもう起こらないよう、一日も早い事故の収束を望みたい。今回は、オデット/オディールは初役という小出が主演した日を観たが、期待にたがわぬ役作りを見せた。

東京バレエ団が採用しているのはゴールスキー版。第1幕のマイムは簡略だが、道化を登場させて見せ場を設け、第3幕の舞踏会はドラマティックに演出し、悲劇で終わらせず、ジークフリート王子が悪魔ロットバルトを倒して現世でオデットと結ばれるハッピーエンドが用意されている。スムースな展開の中に、登場人物の心理も的確に描き込まれている。

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小出は小柄だが上体も下半身も安定感があり、全身からパワーを放つことができるのも強みだろう。テクニックは確かで、豊かな表現力は抜きんでている。ジークフリート王子と出会った時のオデットの驚きや恐怖心、それが王子を信じ頼る心へと変わる様を、交わす視線や王子にもたせかけた背で伝え、清楚さの中に匂わせた艶めかしさに王子への愛を感じさせた。白鳥の姿に戻る時、必死に腕を王子のほうに伸ばして魔力に抵抗する様は哀れを誘った。オディールでは艶然とした笑みに凄みを湛え、自信ありげに王子の心を翻弄し、思いのままに操った。終幕での、オデットの嘆く姿との演技の対比も鮮やかだった。王子役の後藤は実人生のパートナーでもあるので、よく息が合っていた。その後藤、ノーブルな雰囲気はあるが、凛々しさも欲しいところ。舞踏会に現れたオディールを待ち焦がれたオデットと信じて疑わず、嬉々として踊る。素直な役作りなのだろう。グラン・パ・ド・ドゥで、おおらかなマネージュを見せたものの、着地などが少し乱れたのは残念だ。

ロットバルト役の柄本武尊は、勢いよくジャンプで舞台を駆け回り、存在感を示した。道化役の小笠原亮は、第1幕では着地が乱れたが、第3幕では小気味よいピルエットを披露。コミカルな演技でドラマの進行を促すなど、舞台を息づかせていた。ただ、王妃には歩き方や仕草で畏敬の念を抱かせるような威厳が欲しかった。踊る場面がなく、出番も少ないが、それなりに重要な役なのだ。民族舞踊では、木村和夫らによるスペインの踊りが迫力があり、緊張感を紡いだ。4羽の白鳥は息遣いまでよく揃っており、3羽の白鳥の踊りはスケール感を感じさせ、群舞は整然として幻想的だった。全体によくこなれており、レベルの高い公演だった。
(2011年6月18日、ゆうぽうとホール)

撮影:Kiyonori Hasegawa
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