ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.04.11]
まず、海外・国内を問わずたいへん多くの方々から温かい心のこもった励ましの言葉を東日本大震災の被災地の方々、さらには私たちにまでお送りいただきまして、誠にありがとうございました。深く感謝いたします。
とりわけ、ベルリンの針山愛美様、パリの大村真理子様、ロンドンのアンジェラ加瀬様は、世界の舞台で活躍している多忙なダンサーたちの熱いメッセージを、即座にとりまとめてお送りいただきました。常日頃から敬愛しているダンサーの方々からのメッセージは、読者およびスタッフ一同の胸に響き、大いに勇気づけられました。
http://www.chacott-jp.com/magazine/news/other-news/

『白鳥の湖』の湖は、悲しみの涙によってできたと言われますが、その涙すらも渇れ果ててしまうのではないか、と大震災に襲われた被災地の映像を見ていて感じました。しかし同時に、世界中の人々からこのように熱い励ましの想いを寄せていただき、はかり知れない元気と叡智をいただきました。多くのダンス公演が中止になるなど様々な影響を受けておりますが、今後ともこの事実を深く心に刻んでおきたいと思います。ありがとうございました。

踊る喜びがふんだんに盛り込まれた牧阿佐美バレヱ団『ドン・キホーテ』

アザリー・M・プリセツキー:演出・振付『ドン・キホーテ』
牧阿佐美バレヱ団

牧阿佐美バレヱ団の『ドン・キホーテ』を久保茉莉恵と菊地研でみた。久保は大阪の松田敏子、漆原宏樹、小嶋直也ほかに学び、ワガノワ・バレエ・アカデミーに一年間留学した経験を持つ。昨年、牧阿佐美バレエ団に入団し、『セレナーデ』のソリストや『くるみ割り人形』のアラブの踊りなどを踊っている。今回の『ドン・キホーテ』が全幕作品の主役デビューとなった。
最初のうちはやや緊張気味ではあったが、プロポーションの良さを生かして基本に忠実に、デビューの舞台全体を明るい雰囲気で見事に踊りきった。さらにキャリアを積んで、よりいっそう細やかな表現を重ねてほしい。

tokyo1104a01.jpg

今回のキャストは、キトリは青山季可と久保、バジルは清瀧千晴と菊地、そしてエスパーダは京當侑一籠と中家正博、サンチョ・パンサは山内貴雄と上原大也、街の踊り子は田中祐子と吉岡まな美、森の女王は吉岡まな美と久保茉莉恵、キューピッドは小松見帆と米澤真弓、ガマーシュは今勇也と保坂アントン慶のダブルキャストだった。牧阿佐美バレヱ団の多彩なダンサー陣をそのキャラクターを見極めながら、自在に配したキャスティングはなかなか興味深かった。たとえば第2幕の森のシーンではドルシネア姫の久保、森の女王の吉岡、キューピッドの米澤がともに踊ると豪華で充実した印象を残した。
そして特に両日ともドン・キホーテを踊った逸見智彦が、良い味を出していておもしろかった。主役として踊る場合と異なり、スローな独特の動きを全編を通じて維持するのは難しかったのではないかと思われるが、逸見はそうした動きをこの舞台をリードする表現として捉え、しっかりと演じた。「さわやかな」というとおかしいかもしれないが、嫌みのない好印象を残したドン・キホーテだった。
菊地研は得意のバジルを、久保への配慮のあるサポートみせながらそつなく踊った。さらに踊り込んでいけば、素敵なパートナーシップが築いていけるのではないだろうか。

マイヤ・プリセツカヤの弟でモスクワの著名な芸術一家出身のアザリー・M・プリセツキーが、牧阿佐美バレヱ団のために1989年に演出・振付けたヴァージョンで、今回が3年ぶり9度目の上演となるそうだ。
『ドン・キホーテ』が世界で初めて上演されたボリショイ・バレエの系譜に連なる舞台で、起伏に富んだストーリーにふんだんに踊りの喜びが盛り込まれた、じつに楽しいエンターテインメントだった。
(2011年3月6日昼 ゆうぽうとホール)

tokyo1104a02.jpg tokyo1104a03.jpg

撮影:鹿摩隆司
※画像をクリックすると、大きな写真をご覧いただけます。