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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.03.10]

国際バレエ学校フェスティバルに招待された若きダンサーたち

「エトワールへの道程2011」
新国立劇場バレエ研修所
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新国立劇場バレエ研修所2009年4月入所第六期生修了公演「エトワールへの道程2011」は、I.シアトリカル・ダンスとしてキミホ・ハルバート振付、メンデルスゾーン『バイオリン協奏曲』による『人魚姫』だった。
物語は、難破して海に来た王子に人魚が恋をする。人間になるための足を欲しがって海の魔王から手に入れる。しかし悲しい結末が訪れる、というもの。人魚姫に中川郁、王子は入戸野伊織、王女が原田舞子、海の魔王に林田翔平、王子の友人に佐藤かんな、宇賀大将というキャスト。六人とも三月に修了を迎える第六期生である。
シアトリカル・ダンスなのでセリフもある。言葉を使った表現はダンサーにまた別種の緊張を与える。しかし特に聞き取りにくいといった問題が感じられなかったのは、若さの持つ順応力だろう。中川は人間に恋をしてしまった人魚の哀しみを表す演技を一心にみせ、好演だった。さらに本番の舞台を踊りこんでいけば、いっそうスムーズに演じることができると思われる。可能性を大いに感じさせる舞台だった。

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次は II.クラシカル・バレエ『シンデレラ』の抜粋。プロコフィエフの音楽を使い小倉佐知子が振付け、バレエ研修所所長の牧阿佐美が監修している。
シンデレラには原田舞子(中川郁とダブルキャスト)、仙女に佐藤かんな、ダンス教師に宇賀大将、道化は入戸野伊織、廷臣には林田翔平ほか。プロフェッショナルのダンサーは、王子に福岡雄大、お姉さんには吉岡まな美と本島美和ほかが加わった。

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原田舞子は華のあるダンサーで、やや緊張気味だったのは無理からぬところだったかもしれない。けれども主役を踊るために欠くことのできない佇まいが具わっていることは心強い。踊り自体もきれいだと思った。
仙女を踊った佐藤かんなも大きなのびしろを感じさせる素敵なダンサーだった。3人の男性ダンサーも元気あふれる踊り。道化を踊った入戸野は独特のキャラクターを持っている。よく自分の特性を見極めてがんばってもらいたいと思った。
もちろん舞台上での課題はそれぞれいろいろあると思われるが、あまり些事にとらわれずここで修得した基本を大切にして、ぜひとも羽ばたいてほしいダンサーたちである。
そして福岡雄大はさすが。登場しただけでプロフェッショナルの逞しさ、力強さ、テクニックや表現力に安定感を感じさせる。またお姉さん役を踊った本島美和がメイクにも工夫を凝らしたのではないかと思うが、とぼけた味わいをみせた。
終演のち六期生全員が、研修修了の言葉をそれぞれの気持を込めて観客にアピールした。

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この後、ワシントンのケネディ・センターの国際バレエ学校フェスティバル「Protégés III」に招待されて『Triptyque(青春三章)』(牧阿佐美・振付、芥川也寸志・音楽)を踊り、全課程を修了する。ちなみに他には、ボリショイ・バレエ学校、デンマーク王立バレエ学校、フリオ・ボッカ財団バレエ学校(アルゼンチン)がこのフェスティバルに参加するそうだ。
新国立劇場バレエ研修所を卒業する若きダンサーたちの将来が輝かしいものであるように、大きな期待を込めて見つめていきたい。
(2011年2月19日 新国立劇場 中劇場)