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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.03.10]

西田佑子と法村圭緒による踊る歓びにあふれた『ドン・キホーテ』

ワレンチン・エリザリエフ:再改訂振付・演出『ドン・キホーテ』
日本バレエ協会
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日本バレエ協会が上演したワレンチン・エリザリエフ版『ドン・キホーテ』は、西田佑子のキトリと法村圭緒のバジルで観た。
西田佑子が法村友井バレエ団を退団してフリーになってからは、ペアを組むことがなくなっていたが、かつては16歳の頃からずっと一緒に踊っていたそうだ。当然ながら息が合っていて、じつに踊り易そうだった。二人の中で「踊りのリズム」が脈打っているのが伝わってくる。捻挫から復帰したばかりの西田佑子にとっては、良いステージだろうと思われた。そしてやはり西田佑子のキトリはじつにいい、大きな赤い花の髪飾りがよく似合って、爽やかな風が歌っているかのような雰囲気が客席に満ちた。
エスパーダを小嶋直也が、香港バレエ団のプリンシパル富村京子のメルセデスと踊った。さすが小嶋、落ち着いた配慮と逞しい動きで風格のあるエスパーダだった。近年の彼は、『三銃士』のルイ十三世、『こうもり』ウルリック役、マキューシオ、ドロッセルマイヤー、ジェームズ、エスパーダ、自身で振付けた『LOOK』『TIME』など様々な役を踊り、徐々に復活を成している。怪我さえなければこの逸材はどんな舞台をみせてくれるだろうか。

エリザリエフの『ドン・キホーテ』のヴァージョンは、あまり物語の細部には拘泥せず、スペインの輝く太陽の下に暮らす人々の稚気に満ちたおおらかさを、観客とともに楽しむかのような明るく和気にあふれたものだった。『ドン・キホーテ』というバレエは、こうして楽しむ舞台なのだよ、と豊かな経験を積んだロシア・バレエの舞踊家に懇切に教えてもらっている気持ちにさせられた演出である。
そうした振付家の趣旨によってか、西田・法村のペアは、『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥならではのダイナミックな踊る歓びを見せてくれた。西田の明るく純粋な美しさと、ワガノワ出身らしい法村の基本に忠実な踊りは、リフトも高く気持良く見ることができた。
そしてラストシーンではキトリが、ガマーシュやロレンツォ、ドン・キホーテまで全員を踊りの輪の中に誘いこむ。キトリとバジルの二人の恋に関わった人々すべての感情が、ともに踊るダンスの渦の中へとみるみる昇華されていった。若き日のスペイン旅行の印象に基づいてこの作品を創ったプティパに、もし、この舞台を観る機会があったならば、我が意を得たり、と膝を打ったのではないか。さらにはカーテンコールの最後の最後まで動き回って、サービスにこれ努めたマシモ・アクリのガマーシュにもブラボーを贈ろう。
素敵な心から楽しめる舞台だったが、西田の足が万全でなかったと聞いていささか暗い気持になった。完全復帰を切にに願いたい。
(2011年1月30日 東京文化会館大ホール)

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撮影:スタッフ・テス 飯田耕治
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