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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.02.10]

テリョーシキナの完璧なキトリが輝いたレニングラード国立バレエ団公演

The Leningrad State Ballet "GISELLE" "DON QUIXOTE" SWAN LAKE"
『ジゼル』『ドン・キホーテ』『白鳥の湖』レニングラード国立バレエ団

2010年12月から11年1月にかけてのレニングラード国立バレエ団の公演は、『くるみ割り人形』『ロミオとジュリエット』『ジゼル』『白鳥の湖』『ドン・キホーテ』という、古典名作全幕バレエ5作品を上演するものだった。ここではその中から『ジゼル』『白鳥の湖』『ドン・キホーテ』の公演を紹介する。

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『ジゼル』
レニングラード国立バレエ団の『ジゼル』は、ニキータ・ドルグーシンの改訂演出版。ドルグーシンはワガノワ・バレエ・アカデミーを卒業してキーロフ・バレエ団(現マリインスキー・バレエ団)で踊った。近年はマリインスキー劇場の向かい側にあるコンセルヴァトワールの芸術監督として、振付作品なども発表していた。
アルベルトはファルフ・ルジマトフ、ジゼルはオクサーナ・シェスタコワが踊った。
第1幕の冒頭は、お馴染みのジゼルとアルベルトの恋の戯れの楽しい有り様が踊られる。ルジマトフにとってはもうお手のものの演技であり、余裕たっぷり音楽ともじつに上手く合わせて、良い雰囲気を醸して踊った。
森番ハンスにはウラジーミル・ツァルが扮したが、第1幕では森番らしい純朴さを率直な演技で表し、第2幕では追い詰められた恐怖を逞しい身体表現でみせた好演だった。ジゼルを踊ったシェスタコワはも安定した踊りだった。
ルジマトフはもう唯我独尊の境地に近いものを感じさせるくらいアルベルトの表現が完成している。ドルグーシンのヴァージョンは極めてオーソドックスなもので、第2幕の舞踊構成がしっかりと整えられている。特にウィリーたちに、休むことを許されず踊り続けさせられたハンスが力尽き、アルベルトが最後の力を振り絞って踊り続ける終盤はなかなか迫力があった。コール・ドもよく整えられており、ロシア的な豊かな情感が次々露になる味わいを随所に感じさせる舞台だった。
(2010年12月28日 Bunkamura オーチャードホール)

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『ドン・キホーテ』
当初、エフゲーニャ・オブラスツォーワが出演する予定だったが、怪我のために同じマリインスキー・バレエ団のプリンシパル・ダンサー、ヴイクトリア・テリョーシキナがゲスト出演して、ファルフ・ルジマトフと踊るというマリインスキー劇場でも滅多にに観られない豪華版になった。
テリョーシキナのキトリは完璧だった。振付の十歩先を見据えたように余裕綽々。信じられないようなしなやかで細身の見事なプロポーションを駆使して、切れ味鋭い技を繰り広げて、百二十パーセントのバランス感覚を発揮した。恐るべき柔軟性であり、これこそ天賦の才能というべきだろう。
狂言自殺のシーンなど演技と存在感では充分楽しかったが、さすがのルジマトフもいささかの年齢による疲労を身体が感じているのだろうか、リフトにも少々力強さが感じられなかった。
ルジマトフが来日後に怪我をしたため、当日の舞台は特別な演出が施され、終幕のグラン・パ・ド・ドゥのヴァリエーションとコーダの部分はシヴァコフとプハチョフが加わってルジマトフとともに踊った。
(2011年1月7日 Bunkamura オーチャードホール)
(この記事は内容に一部誤りがございましたので訂正いたしました)

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『白鳥の湖』
ジークフリートはルジマトフ、オデット/オディールはイリーナ・ぺレンが踊った。
第1幕はジークフリート王子が冒頭から祝宴のすべてを、あれこれととり仕切っていた。こうした振付なのだろうが、王子なのだから仕切りは儀典長に任せておおように構えていたほうが良いのではないか、とも感じた。リムスキー・コルサコフ記念レニングラード音楽院バレエ演出研究所の改訂演出、とクレジットされていた。長い間、ドルグーシンが所属していたところのことだと思われる。
家庭教師(アレクセイ・マラーホフ)が、このヴァージョンには登場しない王子の友人ベンノと道化の一部分をも兼ねたような役回りを演じる。若い女性たちにおどけてみせて、老いのだらしなさを表し、王子のメランコリーな気分を浮かび上がらせた。
オリガ・ステパノワ、ワレーリア・ザパス二コワ、ミハイル・シバコフのパ・ド・トロワは雰囲気のある踊りで良かった。コール・ド・バレエの衣裳も可愛らしく、全体が音楽にものっていた。ペレンのオデットは美しく、バランスがよく隙がなくきれいなラインを描いていた。オディールはレベル以上の優れた演技をみせたが、特別に抜きん出た美しさを表すまでにはいたらなかった。
黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥのヴァリエーションは、王子の友人としてパ・ド・トロワを踊ったシバコフに譲り、コーダにはルジマトフが再び戻って締めくくった。
(2011年1月9日 東京国際フォーラムホールA)

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photo:瀬戸秀美 / 写真提供:光藍社
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