ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.01.11]

ストラヴィンスキーの難曲に挑んだ平山素子の二作

平山素子 演出・振付『兵士の物語』、平山素子 演出・美術原案/平山素子、柳本雅寛振付け・出演『春の祭典』
「ストラヴィンスキー・イブニング」新国立劇場

「ストラヴィンスキー・イブニング」と題されて平山素子が中心となって創作された『兵士の物語』『春の祭典』が、新国立劇場により上演された。
新作『兵士の物語』は平山の演出・振付、兵士役は吉本真悟、プリンセスは大貫勇輔、悪魔を若松美黄ほかに三人のコール・ドが踊った。
語り手を使わずに物語を書いた一冊の本を示してダンスを構成するという試みで、まずは天から金色の髪をしたプリンセスがゆっくりと降臨して始まった。悪魔は上手奥に控えた演奏家たちの間から登場する。総髪にジャケットを着込んでいる。兵士と悪魔、コール・ドが複雑に絡みながら、かなり激しい振りをきびきびと踊った。よくストラヴィンスキーのリズムをとらえて小気味のいい踊りだった。
兵士の魂を象徴する小さな赤いヴァイオリンを巡って、欲望の幻影を映すプリンセスが錯綜して、二転三転。現実と幻想を往来した兵士はすべてを失ってただ小さなヴァイオリンだけを取り戻した。あるいは人生とはこんなもの、といった感慨を抱かされた。

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『春の祭典』は08年初演の舞台の再演。
ストラヴィンスキー自身が編曲したピアノ連弾用の曲を使って、舞台奥を一段高めて二台のピアノを向かい合わせて演奏する。舞台フロアー上には白い粉が薄く不規則に撒かれていた。振付と出演は平山素子と柳本雅寛。
照明が大きな楕円を描く舞台上を、白い儀式用を思わせる衣裳を着けた平山がめぐる。『春の祭典』のあの狂おしく始源を感じるように懐かしいメロディが流れて、やはり白い衣裳の柳本が登場。男と女が踊り始めて、舞台が呼吸しはじめた。
初演の後、トルコのフェスティバルでも上演したそうだが、じつに息のあったスムーズな動きである。よく息があがらないものだ。暗転があって、舞台に背もたれのない椅子が二脚置かれ、黒い衣裳に着替えた男と女の踊りが再開した。
ただひたすら生きるこて謳歌するだけだった男と女は、生きる場所と役割を見つけたかのような絡みとなる、ミニマムの社会が出現したのか、とも思った。
そしてクライマックスのラストシーンへ。白い粉をまぶしたように見えたフロアーが、いつの間にかするすると舞台奥のブラックホールへと吸い込まれていく。まず女がやがて男が吸い込まれ、舞台上は空っぽ。すると全体がせりあがり、ダンスは終幕を迎えたのだった。
(2010年12月4日 新国立劇場 小劇場)

撮影:鹿摩隆司
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